心の生理作用と病理状態

☆心の生理作用と病理状態

1.血脈を主る
心気の作用により、血を推動して脈中を運行させ、身体各部に行き渡らせ臓腑、器官、経絡、経筋、皮 毛など全身を栄養する。
血脈を主る作用が失調すると、身体各部の栄養は低下し、面色不華となったり甚だしくなると青くなったり紫色となる。また、胸痺や心悸など心機能に影響が及ぶ。

2.神志を主る
神志を主るは、“心は神を蔵す”“心は神明を主る”などとも言われているが、中医における“神”は、精神・意識・思惟活動を主宰する機能を指し“心神”とも言う。神志にはと狭義の意味がある。
広義の神とは、人体の形象、顔色、眼神、言語の応答、身体の動きなど人体の外面的な形態や動作のことを指している。
狭義の神とは、精神、意識、思考・分析・帰納・判断など思惟活動を出現させることを指している。神志を主る作用が失調すると、気分が落ち着かない、不眠、多夢となり、甚だしくなると身体運動の失調、うわごとを言ったり、狂躁の状態となる。
また、神志=現代医学的には脳の機能と解釈されるが、神志活動を出現させる物質的な側面からは、腎は精を蔵す作用だけではなく、精血を補充するという意味から神の血脈を主る作用と密接に関連する。

3.喜は心の志
喜ぶという感情は人体にとって良性の刺激であり、また人体の各種生理活動に対してプラスに作用する反面、過度になりすぎると心神を損傷することがある。
また、神志を主る作用が失調すると笑いが止まらなくなったり、逆にちょっとしたことでも悲しみを強く感じるようになる。また、喜ぶという感情だけでなく五志である怒・喜・憂・思・恐の極端な変化に より心神は損傷する。

4.汗は心の液
汗は津液が化生されて排泄されるが、血と津液は源を同じすることから汗は心の液と言われている。自汗など、極度の発汗異常は心気虚、心陽虚によってもおこることがある。

5.体は脈に合し、華は顔にある
脈とは血脈のことを指すが、全身の血液が心に帰属していることを指したものである。
華とは色彩や光沢の状態を言う。頭顔面部は血脈が豊富であるため、心の生理作用の状態が顔面の色彩、光沢の状態から判断できることを表現している。
心気が不足すると面色は艶のない白色となり、血虚となると面色不華となる。また、オ血の時には面色は青紫色となることが多い。

6.舌に開竅する
味覚の識別と、舌の正常な運動による言語の表現という機能を指している。
従って、心の生理作用に異常が生じると味覚の異常、舌のこわばりや萎縮、言語障害、舌の痛みや舌の潰瘍などが出現する。