気血津液弁証 ~ 気病弁証

☆気血津液弁証-気病弁証

1.気の機能の減退
気の機能が減退すると、推動、温煦、防御、固摂、気化、栄養などの機能が低下するために各種症状が出現する。

A.気虚証
気虚証は、元気の損耗、臓腑機能の低下、抵抗力の減退した状態を指す。
:病因病機
元来の虚弱体質、過度の肉体疲労や精神疲労、出産による体力消耗、久病などによって正気を消耗したために気虚となる。
:気虚証の基本症状
活動時や疲労時に症状が悪化する、倦怠感、脱力感、精神疲労、懶言、自汗、息切れなどが気虚証の基本症状である。
:舌質-淡、胖。舌苔-白薄。脈-緩、弱、虚など。
:治法-補気。
:気虚証治療の基本穴-脾兪、胃兪など健脾益気の作用のある穴に補法を行う。

①心気虚証
:主症状
気虚証の基本症状に加え、心気、セイチュウ、息切れがあり、運動すると悪化する、胸悶、不眠、多夢など。
:舌質-淡、舌苔-白薄。脈-細弱または結代。
:治法-補益心気。
:取穴例-上記基本穴+心兪、神門などに補法を行う。

②肺気虚証
:主症状
気虚証の基本症状に加え、少気、無力な咳喘、水様の痰、自汗、悪風、感冒にかかりやすく治りにくい、声が低く弱いなどの症状が出現する。
:舌質-淡、舌苔-白薄。脈-弱で無力など。
:治法-補益肺気。
:取穴例-上記基本穴+肺兪、太淵などに補法を行う。

③脾気虚証
:主症状
気虚証の基本症状に加え、食欲不振、大便溏薄、食後腹脹、面面色萎黄などの症状をともなう。
:舌質-淡、胖、歯痕、苔-白薄。脈-虚、弱など。
:治法-健脾益気。
:取穴例-上記基本穴+脾兪、中カンなどに補法を行う。

④腎気虚証
:主症状
腰膝酸軟、耳鳴り、難聴、歯の動揺、健忘などの早老状態、性欲減退、不妊、閉経、陽萎、経少、精少、発育が遅いなど。気虚証の基本症状をともなわないこともある。
:舌質-淡紅。舌苔-白薄。脈-沈細などで、尺脈無力。
:治法-補益腎気。
:取穴例-関元(補法)、太谿(補法)、腎兪(補法)-温補腎陽、補益精血

B.気陥証
気陥証は、気虚のために昇挙作用が低下しておこる病的状態を指す。
:病因病機
元来の虚弱体質、過度の肉体疲労や精神疲労、出産による体力消耗、久病などによって正気を消耗して昇挙無力となるためにおこる。
:主症状
気虚証の基本症状に加え、胃下垂や腎下垂、脱肛、子宮脱などの内臓および眼瞼も含む下垂症状あるいは下墜感が出現する。
:舌質-淡、胖。舌苔-白薄。脈-緩、弱、虚など。
:治法-昇陽益気。
:取穴例-気虚証治療の基本穴+百会、合谷、足三里に補法を行う。

2.気の運行の失調
気の昇降出入の失調のために起こり、臓腑経絡の機能、及びそれらの相互間の協調関係が失調するために各種機能に影響が及ぶ。

A.気欝証(気滞証)
:病因病機
気の運行の停滞を指す。
情緒不安、飲食不節、痰湿・血行不良などによる経絡の阻滞、外傷などによって起こる。
:主症状
a.脹悶感を伴った疼痛が現れる。
b.疼痛より脹りの方が強いことが多い。
c.症状は時に強く、時に非常に軽く、原因のかかり方によって程度が違う。
d.症状は遊走性であり固定しない。
e.胸脇部、乳房、胃カン部などの部位に多く診られる。
f.ゲップや矢気のあとに軽減する。
舌脈-その時の状態により、舌脈象は様々である。
:治法-理気。
:取穴例-基本的には理気、行気、散滞の作用のある穴に瀉法を行い、局所の理気を図る。必要に応じ、下記の穴などで全身の理気を図る。
太衝(瀉法)-疏肝理気 外関(瀉法)-宣通三焦経気

①肝気欝結証
:病因病機
長期にわたりストレスを受け続けたり、精神的な抑欝が続いたり、突然強い精神的刺激を受けたり、陰血不足となると肝が滋養されなくなるために肝気欝結となる。
:主症状
イライラ感、精神抑欝感、易怒、ため息が多い、胸脇部や乳房、乳房や胸脇部、少腹部の脹満感や脹痛、経乱、経量不定など。
:舌質-紅、苔-白薄。脈-弦。
:治法-疏肝理気。
:取穴例
太衝(瀉法)、陽陵泉(瀉法)-疏肝利胆 支溝(瀉法)-宣通三焦経気

B.気逆証
:病因病機
気の昇降機能が失調した為に臓腑の気が上逆した状態をいう。
:主症状-臨床上では肺、肝、胃によくみられる。
a.肺気上逆-粛降作用が失調した為に、咳嗽、喘息などの症状が現れる。
b.肝気上逆-疏泄機能が失調すると、易怒、頭痛、眩暈などの症状が現れる。
c.胃気上逆-和降作用が失調して胃気が上逆すると、嘔吐、悪心、アイ気などの
症状が現れる。
:取穴例
a.肺気上逆-尺沢に瀉法を行う。
b.肝気上逆-太衝、陽陵泉、支溝などに瀉法を行う。
c.胃気上逆-足三里、中カンに瀉法を行う。

C.気閉証と気脱証
①気閉証
:病因病機
臓腑経絡に火熱や痰濁が停滞すると気欝がひどくなり、気の外出運動ができなくなるためにおこる。
:主症状
突然の卒倒、神志不清、四肢厥冷などの厥証の症状が出現する。
:治法-醒脳開竅、滋補肝腎。
:取穴例-内関、人中に瀉法、三陰交に補法を行う。

②気脱証
:病因病機
大出血やショック状態などにより、正気がひどく消耗して邪気に抵抗できなくなり、突然正気がつきて虚脱状態に陥るものである。
:主症状
神志昏迷、瞳孔散大、面色蒼白、冷汗如油、呼吸微弱や停止など。
:治法-醒脳開竅、回陽救逆。
:取穴例-内関、人中に瀉法、気海、関元などに灸を行う。