☆ 尿が濃く黄色い（小便黄赤）
本症は、尿が濃く粘稠となり、尿の色が黄色～深黄色～黄赤色～赤褐色と変化するもので、甚だしくなると茶褐色となるものであり、中医では総称して小便黄赤という。本症には、血尿などによる尿色の変化や、暑い季節の水分摂取量の不足などによる正常範囲での尿の濃縮は含めない。
1.膀胱湿熱による小便黄赤
：病因病機
脂濃いものや甘いもの、味の濃いものの過食やアルコールの常飲などにより中焦に溜まった湿熱が下焦に流注し、膀胱に蓄積したために小便が黄赤となる。
：鑑別点
尿が黄色あるいは赤色で少量。尿や尿道の灼熱感をともなう。尿意急迫。
：随伴症状
小腹部の脹悶感や脹痛、頻尿、身熱、口渇少飲または多飲（冷飲を好む）、尿混濁など。
：舌脈 舌質－紅、舌苔－黄。脈－滑数など。
：弁証－膀胱湿熱。 ：治法－清熱利湿。
：取穴例
中極（瀉法）、膀胱兪（瀉法）、陰陵泉（瀉法）－清膀胱湿熱。次リョウ（瀉法）－駆邪散滞。
2.肝胆湿熱による小便黄赤
：病因病機
脂濃いものや甘いもの、辛いものの過食やアルコールの常飲などにより中焦に溜まった湿熱が肝胆に蘊結して膀胱に下注したために小便が黄赤となる。
：鑑別点
尿が黄色で少量または黄赤色で甚だしいときは濃い茶のような色になる。
：随伴症状
胸脇部痛、身熱不揚、口苦、口が粘る、食欲不振、厭食、腹脹、下痢または便秘など。
：舌脈 舌質－紅、舌苔－黄膩。脈－弦数、弦滑など。
：弁証－肝胆湿熱。 ：治法－清利肝胆湿熱。
：取穴例
太衝（瀉法）、支溝（瀉法）、陽陵泉（瀉法） －疏肝利胆、清化湿熱。中極（瀉法）－通利小便。
3.胃腸実熱による小便黄赤
：病因病機
陽盛体質の者、辛いもの、脂濃いものや味の濃いものの過食やアルコールの常飲などによって胃の気機が阻滞して化熱する、あるいは外感や内傷の熱邪が胃に停滞するために胃熱が生じて胃腸に積滞し、その熱が膀胱に下注するために小便が黄赤となる。
：鑑別点
尿が濃く少量。胃カン部灼熱感を伴う。
：随伴症状
腹部脹痛、圧痛（拒按）、身熱、便秘、小便黄赤、悪心、口渇少飲または多飲（冷飲を好む）、心煩、不眠など。
：舌脈 舌質－紅、舌苔－黄で乾燥。脈－滑数など。
：弁証－胃腸実熱。 ：治法－清胃腸熱。
：取穴例
内庭（瀉法）、合谷（瀉法）－清陽明実熱。中極（瀉法）－清瀉欝熱。次リョウ（瀉法）－駆邪散滞。
4.心火亢盛による小便黄赤
：病因病機
五志過極による気鬱化火、六淫の邪気の熱化、辛い物の過食などによって心火が亢盛となって小腸に伝わり、小腸の泌別作用が失調ために小便黄赤となる。
：鑑別点
尿が濃く少量。排尿困難および排尿時に陰部に灼熱性疼痛を感じる。
：随伴症状
心悸、心胸煩熱、不眠、多夢、焦燥感、口舌の潰瘍、面紅、口渇多飲（冷飲を好む）、吐血、衄血など。
：舌脈 舌尖紅絳または芒刺、舌苔－黄で乾燥。脈－数で有力など。
：弁証－心火亢盛。 ：治法－清心瀉火。
：取穴例
神門（瀉法）、大陵（瀉法）－清心瀉火。膀胱兪（瀉）、中極（瀉）－清瀉欝熱。
5.腎陰虚による小便黄赤
：病因病機
精血不足、津液虚損、熱病による傷陰、久病、房事過多、五志過極、飲酒過度などによって腎陰が虚して内熱が生じ、内熱が膀胱に停滞するために小便が黄赤となる。
：鑑別点
尿が黄色で少量。陰部に軽度の熱感を感じる。
：随伴症状
頬部紅潮、潮熱、盗汗、五心煩熱、口乾、頭のふらつき、消痩、耳鳴り、腰膝酸軟など。
：舌脈 舌質－紅、舌苔－少or無苔。脈－細数。
：弁証－腎陰虚。 ：治法－滋陰清熱。
：取穴例
中極（瀉法）－清瀉欝熱。復溜（先瀉後補）－滋陰降火。太谿（補法）、照海（補法）－滋陰補腎。
6.寒湿阻滞による小便黄赤
：病因病機
雨に打たれて身体を冷やす、長期間の湿地での生活などによって寒湿の邪が侵襲し、膀胱の気化作用を傷害して排尿不利となって化熱するために小便が黄赤となる。
：鑑別点
小便黄赤。尿量減少はない。
：随伴症状
顔色がどす黒い、寒がる、全身倦怠感、食欲不振、小腹部の脹悶感や痛み、泥状便～水様便、浮腫、胸や腹がつかえて脹る、水様の痰など。
：舌脈 舌質－淡、舌苔－白膩。脈－濡、緩など。
：弁証－寒湿阻滞。 ：治法－温化化湿。
：取穴例
神闕（灸）－温散寒邪。陰陵泉（瀉法）－利水。中極（瀉法）－通利小便。