☆ 臍周辺の痛み（臍腹痛）
このページは、鍼灸師、医師向けの鍼灸治療法を紹介するページです。
この症状でお悩みの方は、はりきゅうマッサージ すこやかな森 で治療をお受けいただけます。
本症は、臍周辺におこる腹痛を指し、中医では臍腹痛という。
1.胃カン食滞による臍腹痛
：病因病機
暴飲暴食をする、不衛生なものを飲食する、あるいは冷たいものや生もの、甘いもの、味の濃いものや油
ものを摂りすぎたために食滞が生じ、胃気が降りなくなるために臍腹痛がおこる。
：鑑別点
臍腹痛（脹痛、拒按）。腐酸臭のするアイ気や嘔吐、下痢をする。それらによって臍腹痛は軽減する。
：随伴症状
胃カン痛（脹痛）、吐くと胃カン痛は軽減する、胃カン部拒按、厭食、矢気など。
：舌脈 舌苔－厚膩。脈－滑、弦滑など。
：弁証－胃カン食滞。 ：治法－消食導滞。
：取穴例
下カン－瀉法－消食導滞。足三里（瀉法）、中カン（瀉法）－通降胃気、消積導滞。
2.腸胃気滞による臍腹痛
：病因病機
暴飲暴食などの飲食不節、食滞などによって、腹中の気滞が生じたために臍腹痛がおこる。
：鑑別点
臍周辺の脹満感を伴う痛みあるいは脹痛。矢気すると痛みは軽くなる。情緒の変動によって痛みが増強す
ることもある。
：随伴症状
食欲がない、気分がすぐれない、よくため息をつくなど。
：舌脈 舌苔－薄白。脈－弦滑など。
：弁証－腸胃気滞。 ：治法－行気散滞、調中止痛。
：取穴例
内関（瀉法）、足三里（瀉法）、中カン（瀉法）－行気散滞、和胃暢中。
3.寒凝気滞による臍腹痛
：病因病機
急激に身体を冷やしたため、あるいは冷たいもののを多飲・多食したために、寒邪が中焦に直中しした影響
で臍腹痛がおこる。
：鑑別点
急激におこる激しい臍腹痛。痛みは冷やすと悪化し、暖めると軽減する。腹部は拒按となる。
：随伴症状
腹部冷痛（拒按喜温）、腸鳴、下痢（水様便）、腹脹、食欲不振など。
：舌脈 舌質－淡紅、舌苔－白薄など。脈－沈緊など。
：弁証－寒凝気滞。 ：治法－温中散寒、理気止痛。
：取穴例
神闕（棒灸）－温散寒邪。足三里（棒灸または灸頭鍼（瀉法））－温胃導滞。上カン（瀉法）－理気和胃。
4.脾腎陽虚による臍腹痛
：病因病機
労倦内傷、久病虚損、久瀉久痢、房事過多などによって脾気と腎気がともに虚して腎陽が脾陽を温煦できな
くなると、中焦の気機を推動できなくなるために臍腹痛がおこる。
：鑑別点
臍周囲の持続性の隠痛。隠痛は暖めたり押さえると軽減し、冷えると悪化する。
：随伴症状
寒がる、四肢や腰腹部の冷え、未消化便を下痢する、五更泄瀉、小便不利、下腹部冷痛、浮腫、腰膝酸軟、
顔色が白い、倦怠無力感、食欲不振など。
：舌脈 舌質－淡、胖大、苔－白薄。脈－沈遅で無力など。
：弁証－脾腎陽虚。 ：治法－温補脾腎。
：取穴例
関元（灸または灸頭鍼（補法））、脾兪（補法）－温補脾腎。中カン（補法）、気海（補法）－補中益気。
5.脾胃湿熱による臍腹痛
：病因病機
脂濃いものや甘いもの、味の濃いものの過食やアルコールの常飲、外界の湿邪の侵襲などによって生じた湿
熱が脾胃に停滞し、気機の阻滞を引きおこすために臍腹痛がおこる。
：鑑別点
臍腹痛。悪臭が強く裏急後重を伴う粘稠あるいは膿血便。
：随伴症状
上腹部膨満感や痛み（拒按）、口が粘る、口渇するが飲みたくない、悪心・嘔吐、泥状便（すっきり排便できな
い）、小便黄赤など。
：舌脈 舌苔－白膩or黄膩。脈－濡数など。
：弁証－脾胃湿熱。 ：治法－清熱利湿、止痛。
：取穴例
豊隆（瀉法）、陰陵泉（瀉法） －燥湿化痰、理気和中。中カン（瀉法）、天枢（瀉法）－調和腸胃。
6.陽明腑実による臍腹痛
：病因病機
温熱の邪が中焦に侵入したり、外感寒邪が裏に入って化熱して胃や大腸に停滞するために臍腹痛となる。
：鑑別点
臍周辺が硬く脹り、強い圧痛（拒按）をともなう臍腹痛。
：随伴症状
大便乾結、小便黄赤、潮熱、悪寒はない、熱感が持続するが発汗しても解熱しないなど。ひどくなると煩燥、
譫語が診られる。
：舌脈 舌質－紅、舌苔－黄厚で乾燥。脈－沈滑、数。
：弁証－陽明腑実。 ：治法－清熱攻下。
：取穴例
内庭（瀉法）、合谷（瀉法）－清陽明実熱。
天枢（瀉法）、中カン（瀉法）、足三里（瀉法）－蕩滌穢濁、清泄胃腸火。