物忘れ(健忘)

投稿者: | 2017年10月25日

☆ 物忘れ(健忘)

このページは、鍼灸師、医師向けの鍼灸治療法を紹介するページです。
この症状でお悩みの方は、はりきゅうマッサージ すこやかな森 で治療をお受けいただけます。

本症は、記銘力や記憶力の減退した状態を指し、すぐに物事を忘れてしまう状態を指す。重症になると話
の前後も一致しなくなって一瞬にして忘れてしまうこともある。ただし、先天的な理由によるものは本項
には含まれない。

1.腎精不足による健忘
:病因病機
 先天不足、久病、重病、不養生、房事過多などによって腎精が不足すると、髄海を満たすことができな
 いために健忘がおこる。
:鑑別点
 健忘。早老となり、甚だしくなると恍惚状態となる。
:随伴症状
 腰膝酸軟や歩行困難、白髪、歯の動揺や脱落、恍惚状態、ぼんやりする、難聴、脱毛、歯の動揺など。
:舌脈 舌質-淡、苔-白薄。脈-虚、弱で尺脈無力。
:弁証-腎精不足。 :治法-補腎填精。
:取穴例
 腎兪(補法)、太谿(補法)、関元(補法)-補腎倍本、補益精血。絶骨(補法)-補益精髄。
 百会(補法)-昇陽益気。

2.心脾両虚による健忘
:病因病機
 思慮過度や、失血は心を損傷し、飲食不節や労倦は脾を損傷する。気血の生成 と血の循環は心と脾が
 協調して行うために心の損傷は脾に、脾の損傷は心に波及しやすく、そのために心脾両虚となって頭部
 を栄養できなくなると健忘がおこる。
:鑑別点
 健忘。疲労感が強く不眠をともなうことが多い。
:随伴症状
 心悸、多夢、精神不安、精神疲労、食欲不振、大便溏薄、易疲労、無力感、面色不華など。
:舌脈 舌質-淡、舌苔-白薄。脈-虚弱など。
:弁証-心脾両虚。 :治法-補益心脾、益髄健脳。
:取穴例
 神門(補法)、三陰交(補法)-補益心脾。脾兪(補法)-健脾益気。百会(補法)-昇陽益気。
 風池(補法)-昇陽健脳。

3.心腎不交による健忘
:病因病機
 房事過多、久病などにより腎陰を損傷すると心火が亢進する。また、五志過極などにより心火が亢進す
 ると腎陰が損傷される。心火の亢盛と腎陰の損傷により心腎不交となると、髄を満たすことができなく
 なるために健忘となる。
:鑑別点
 健忘。焦燥感が強く不眠をともなう。
:随伴症状
 心悸、心胸煩熱、健忘、五心煩熱、口乾、めまい、耳鳴り、腰膝酸軟、遺精など。
:舌脈 舌質-紅、舌苔-少or無苔。脈-細数。
:弁証-心腎不交。 :治法-滋陰降火、交通心腎、益髄健脳。
:取穴例
 神門(瀉法)、大陵(瀉法)-清心瀉火。風池(瀉法)-潜陽。復溜(先瀉後補)-滋陰降火。
 太谿(補法)-補益腎陰。

4.痰濁阻滞による健忘
:病因病機
 脂濃いものや甘いもの、味の濃いものの過食やアルコールの常飲、あるいは外界の湿邪などによって生
 じた痰湿が中焦に停滞したために清陽が昇らず、濁陰が降りず、そのために心神に影響すると健忘とな
 る。
:鑑別点
 健忘。倦怠感や身重感が強く動きたがらない。
:随伴症状
 胸苦しい、水分を飲むと吐く、食欲不振、手足や陰部の湿り、浮腫、痰が多い、頭重、身重感、悪心な
 ど。
:舌脈 舌苔-白膩。脈-滑など。
:弁証-痰濁阻滞。 :治法-去痰降濁、益髄健脳。
:取穴例
 豊隆(瀉法)、陰陵泉(瀉法)-燥湿化痰。中カン(瀉法)-去痰降濁。頭維(瀉法)-降濁。
 風池(補法)-昇陽健脳。

5.血オによる健忘
:病因病機
 長期にわたるストレス、突然の精神的刺激などによって肝気欝結となり、気滞から血オとなったり、外
 傷によって生じたオ血が頭部の経絡を阻滞させる、あるいは気血がめぐらない影響で心神が栄養を受け
 られないために健忘となる。
:鑑別点
 突然おこる健忘。
:随伴症状
 頭痛、腫瘤、舌のこわばり、口唇が紫暗、顔色がどす黒い、口渇するが飲みたくない、肌膚甲錯など。
:舌脈 舌質-紫暗、オ斑、オ点など。脈-渋など。または舌脈正常。
:弁証-血オ。 :治法-活血化オ。
:取穴例
 膈兪(瀉法)、太衝(瀉法)-疏肝活血。三陰交(瀉法)、間使(瀉法)-活血散滞。