☆ 稀発月経、月経周期の延長（経遅）
このページは、鍼灸師、医師向けの鍼灸治療法を紹介するページです。
これらの症状でお悩みの方は、はりきゅうマッサージ すこやかな森 で治療をお受けいただけます。
本症は、月経が予定より7日以上遅く開始するもの、あるいは一ヶ月以上甚だしければ二～三ヶ月に1回程度
くらいしか来潮せず、併せて下記のような身体症状を伴うものを指し、中医では経遅あるいは月経後期という。
ただし、たまたま月経の間隔が空いただけのものや、他の身体症状を伴わないものは本章には含まれない。
1.血オによる経遅
：病因病機
肝気欝結、寒邪や熱邪、湿邪などの停滞による気滞からの波及、あるいは外傷、手術、悪露の停滞などが
原因となって?血が生じ、胞宮に停滞するために月経過少となる。
：鑑別点
経遅。経色紫暗で血塊が混じ る。下腹部の強い痛み（刺痛あるいは絞痛）を伴い、血塊が排出されると痛み
は軽減する。
：随伴症状
経血紫暗で少なく血塊が混じる、下腹部痛は固定性で、甚だしいときは腹部に腫塊を形成する。
：舌脈 舌質－紫暗、オ斑、オ点など。脈－渋など。または舌脈正常。
：弁証－オ血。 ：治法－活血化、調経。
：取穴例
太衝（瀉法）、三陰交（瀉法）－理気活血。気海（瀉法）－行気散滞。
2.痰湿による経遅
：病因病機
脂濃いものや甘いもの、味の濃いものの過食やアルコールの常飲、外界の湿邪、月経期に性交する、あるい
は肝欝気滞から痰湿阻滞を引きおこすなどによって生じた痰湿が胞宮に侵入し、胞宮の気機を阻滞させるた
めにおこる。
：鑑別点
経遅。手足や陰部、全身の湿りを伴う。
：随伴症状
経血暗紅、経量が少なく粘稠で線状物が混じる、粘稠な白帯または黄帯、浮腫、痰が多い、胸苦しい、水分を
飲むと吐く、食欲不振、頭重、めまいなど。
：舌脈 舌苔－白膩。脈－滑など。
：弁証－痰湿阻滞。 ：治法－去痰降濁、調経。
：取穴例
豊隆（瀉法）－化痰降濁。気海（瀉法）、中極（瀉法）－行気利水、通調胞宮。子宮(補法)－調補衝任。
3.寒凝による経遅
：病因病機
月経期や妊娠期に風寒の邪を感受したり、冷たいもののを多飲・多食する、雨に濡れるなどによって身体を冷
やし、そのために寒邪が胞宮に侵入し、胞宮の気機を阻滞させるためにおこる実寒証である。
：鑑別点
経遅。月経前や月経期に強い下腹部痛（絞痛などで拒按）。痛みは温めると軽減し冷やしたり腹部を押さえる
と増強する。
：随伴症状
経血は暗紅色～暗黒色で薄くて少量、血塊が混ざる、面色蒼白、四肢の冷え、寒がるなど。
：舌脈 舌質－淡暗、苔－白滑。脈－沈遅、沈緊など。
：弁証－寒凝胞宮。 ：治法－温経散寒、調経。
：取穴例
帰来（灸頭鍼（瀉法））、気海（灸頭鍼（瀉法））－温経散寒。次リョウ（瀉法）－駆邪散滞。
4.衝任虚寒による経遅
：病因病機
陽虚の体質、房室過度、若年の出産、出産過多、気虚が生じて胞宮を栄養できないなどから胞宮の虚寒が生
じ、胞宮を温煦できなくなるために経遅となる。
：鑑別点
経遅。月経後半や月経終了後に下腹部冷痛（隠痛、喜按）。温めたり押さえると痛みは軽減し、冷やすと痛み
は増強する。
：随伴症状
経血希薄で暗紅、量は少ない、寒がる、下腹部が冷える、下腹部の下墜感、腰が冷えてだるい、量が多く水
様の白帯、小便清長、下痢など。
：舌脈 舌質－淡、舌苔－白薄。脈－沈、遅など。
：弁証－衝任虚寒。 ：治法－温経散寒、調補衝任。
：取穴例
関元（灸または灸頭鍼（補法））、腎兪（灸または灸頭鍼（補法））－温補腎陽。
気海（補法）、帰来（補法）－調補衝任
5.血虚による経遅
：病因病機
脾虚による生血不足、失血過多、久病、多産による精血の消耗などのために血虚となると、血海が充足するの
に時間がかかるために経遅となる。
：鑑別点
・経遅。・経量は少なく淡紅で清稀。
：随伴症状
月経後半あるいは月経終了後に下腹部隠痛（喜按）、面色萎黄または淡白で不華、口唇や爪が淡白、不眠、
めまい、目のかすみ、四肢のシビレ感など。
：舌脈 舌質－淡紅。脈－細弱など。
：弁証－血虚。 ：治法－養血調経。
：取穴例
血海（補法）、三陰交（補法）、膈兪（補法）－健脾、大補営血。子宮（補法）－調補衝任。