☆ 外陰部の冷え（陰冷）
本症は、陰茎や陰嚢に冷えを自覚する、あるいは触覚により冷えを感じる状態であり、中医では陰冷と呼ぶ。
古典では、本症は男性の症状を指し、女性の外陰部の冷えは“婦人陰寒”と分けているが、病因や状態は非常に似ているため、下記と同様の方法にて鑑別・治療は可能である。
1.肝経湿熱による陰冷
：病因病機
脂濃いものや甘いもの、味の濃いものの過食やアルコールの常飲、外界の湿邪の侵襲などによって生じた湿熱が肝経に侵入して停滞するために陰冷となる。
：鑑別点
陰冷。陰部の発汗や悪臭をともなう。
：随伴症状
陰部の湿潤や湿疹・掻痒感・脹痛、小便黄赤など。
：舌脈 舌質－紅、舌苔－黄膩。脈－弦数、弦滑など。
：弁証－肝経湿熱。 ：治法－清利肝経湿熱。
：取穴例
曲泉(瀉法)、太衝(瀉法)－清利肝経湿熱。中極(瀉法)－清熱利湿。豊隆（瀉法）－去痰降濁。
2.腎陽虚による陰冷
：病因病機
腎気虚からの発展、久病、先天不足、房事過多、外邪による陽気の損傷などによって腎陽が虚損し、前陰を温煦できなくなるために陰冷となる。
：鑑別点
慢性的な陰冷。冷えると陰冷は悪化する。
：随伴症状
寒がる、四肢や腰腹部の冷え、未消化便を下痢する、五更泄瀉、小便清長、下腹部冷痛、浮腫、腰膝酸軟、
懶言、精神不振、倦怠無力感など。
：舌脈 舌質－淡、苔－白薄。脈－沈遅で無力など。
：弁証－腎陽虚。 ：治法－温補腎陽。
：取穴例
関元（灸または灸頭鍼（補法））、腎兪（灸または灸頭鍼（補法））－温腎壮陽。
気海（補法）－培補元気。