熱がる・発熱

投稿者: | 2017年10月25日

☆ 熱がる・発熱

このページは、鍼灸師、医師向けの鍼灸治療法を紹介するページです。
この症状でお悩みの方は、はりきゅうマッサージ すこやかな森 で治療をお受けいただけます。

本項では、熱がる(熱感を感じる)あるいは発熱がおこる病態をまとめた。これらの症状は、外感病によって、
または内傷では虚実寒熱あらゆる原因によっておこる。熱がり方や発熱の状況に加え、随伴症状から判断
するとよい。

1.風寒による熱がり・発熱
:病因病機
 風寒の邪気が肌表に侵襲して停滞するために発熱がおこる。
:鑑別点
 発熱は軽いが悪寒が強い。
:随伴症状
 頭痛、身体痛、無汗、鼻閉、痰や鼻水は透明で水様など。
:舌脈 舌苔-白薄。脈-浮緊。
:弁証-風寒証。 :治法-去風散寒、解表。
:取穴例
 風池(瀉法)-去風。外関(瀉法または灸頭鍼(瀉法))-散寒解表。大椎(温法)-宣陽解表。

2.風熱による熱がり・発熱
:病因病機
 風寒の邪気を感受してそれが化熱する、あるいは感受した風熱の邪気が肌表に侵襲して停滞するために発
 熱がおこる。
:鑑別点
 発熱。悪寒は軽いか感じない。
:随伴症状
 悪風、無汗または少汗、軽度の口渇、黄色く粘稠な痰や鼻水、咽喉の発赤と疼痛など。
:舌脈 舌質-紅、舌苔-薄黄。脈-浮数。
:弁証-風熱症。 :治法-去風清熱、解表。
:取穴例
 風池(瀉法)-去風。外関(瀉法)、大椎(瀉法)-清熱解表。

3.風湿による熱がり・発熱
:病因病機
 風湿の邪気が肌表に侵襲し、衛気を停滞させるために発熱がおこる。
:鑑別点
 軽度の発熱。軽度の悪寒と悪風をともなう。
:随伴症状
 頭痛、自汗、身重感、小便不利、下痢、食欲不振など。
:舌脈 舌苔-白薄。脈-浮緩。
:弁証-風湿症。 :治法-去風利湿。
:取穴例
 風池(瀉法)-去風。陰陵泉(瀉法)-利湿。外関(瀉法)-解表。

4.暑湿による熱がり・発熱
:病因病機
 湿気が多く蒸し暑い時期に、暑湿の邪気が肌表に侵襲して停滞するために発熱がおこる。
:鑑別点
 高熱。軽度の悪寒をともなうことが多い。
:随伴症状
 頭脹、顔面紅潮、煩渇、身重感、胃カン部のつかえ、下痢、小便短赤など。
:舌脈 舌質-紅、舌苔-黄膩。脈-滑数、洪大など
:弁証-暑湿証。 :治法-清暑清熱。
:取穴例
 委中(瀉法)、曲沢(瀉法)-清暑解毒。大椎(瀉法)、合谷(瀉法)-清気分熱。

5.実熱による熱がり・発熱
:病因病機
 素体の陽気が盛んな体質の者(いわゆる熱がりのタイプ)や、体内の陽気の亢進、外邪や病理産物の停滞
 による邪欝化火、気滞から波及した気欝化火、あるいは五志過極などによって実熱傾向となるためにおこる。
:鑑別点
 季節や時間などによる変化はなく、年中熱がる。熱いものの飲食や入浴、気温の上昇にともなって悪化する。
:随伴症状
 全身症状はないあるいは項背部の熱感、面紅目赤、口渇多飲(冷飲を好む)、多汗、便秘、小便黄赤など。
:舌脈 舌質-紅。舌苔-黄。脈-数。
:弁証-実熱。 :治法-清泄実熱。
:取穴例
 大椎(瀉法)、曲池(瀉法)、合谷(瀉法)-清泄実熱。

6.血熱による熱がり・発熱
:病因病機
 陽盛内熱の体質、辛いものや刺激物などの嗜好、辛熱助陽の薬物の過服などにより生じた実熱がや他臓腑
 の実熱が血分に移って血熱となるためにおこる。
:鑑別点
 午後潮熱あるいは夜間潮熱。皮膚の灼熱感をともない、甚だしくなると皮膚のかさつきや痒みに発展する。
:随伴症状
 顔面紅潮、煩燥、不眠、口渇少飲または多飲(冷飲を好む)、焦燥感など。
:舌脈 舌質-紅絳、舌苔-黄。脈-数で有力。
:弁証-血熱。 :治法-清熱涼血。
:取穴例
 血海(瀉法)、三陰交(瀉法)-清熱涼血。大椎(瀉法)-清泄実熱。

7.湿熱による熱がり・発熱
:病因病機
 脂濃いものや甘いもの、味の濃いものの過食やアルコールの常飲、外界の湿邪などによって生じた湿熱が
 内蘊するためにおこる。
:鑑別点
 動き始めや活動時に熱さを感じて発汗をともなうが、その後風にあたったりじっとしていると冷えを感じ
 る。あるいは身熱不揚。
:随伴症状
 口が粘る、口渇少飲または多飲(冷飲を好む)、?腹脹満、頭重、身重感、身熱不揚、小便短赤、泥状便
 ですっきり排便できないなど。
:舌脈 舌質-紅、舌苔-黄膩。脈-滑数など。
:弁証-湿熱阻滞。 :治法-清熱利湿。
:取穴例
 中極(瀉法)、膀胱兪(瀉法)-清利下焦。陰陵泉(瀉法)-利湿。
 豊隆(瀉法)、中カン(瀉法)-去痰降濁。

8.陰虚による熱がり・発熱
:病因病機
 精血不足、津液虚損、熱病による傷陰、久病、房事過多、五志過極、飲酒過度などによって腎陰が虚して
 内熱が生じるためにおこる。
:鑑別点
 午後潮熱あるいは夜間潮熱。甚だしくなると骨蒸潮熱となる。
:随伴症状
 頬部紅潮、盗汗、五心煩熱、口乾、頭のふらつき、消痩、耳鳴り、腰膝酸軟など。
:舌脈 舌質-紅、舌苔-少or無苔。脈-細数。
:弁証-陰虚。 :治法-滋陰清熱。
:取穴例
 復溜(先瀉後補)-滋陰降火。太衝(瀉法)-平肝潜陽。太谿(補法)、照海(補法)-補益腎陰。

9.血虚による熱がり・発熱
:病因病機
 脾虚による生血不足、失血過多、久病、多産による生血の消耗などによって陰血不足となると、陰陽のバ
 ランスが失調して相対的に陽気が浮越するためにおこる。
:鑑別点
 午後潮熱あるいは微熱が続く。疲れると症状は悪化する。
:随伴症状
 面色萎黄または淡白で不華、口唇や爪が淡白、不眠、めまい、目のかすみ、四肢のシビレ感、心悸または
 盗汗、五心煩熱、頬部紅潮など。
:舌脈 舌質-淡。脈-細弱など。
:弁証-血虚。 :治法-滋陰養血。
:取穴例
 脾兪(補法)、血海(補法)-健脾生血。太谿(補法)-補益腎陰。復溜(先瀉後補)-滋陰清熱。

10.血オによる熱がり・発熱
:病因病機
 肝気欝結、寒邪や熱邪、湿邪などの停滞からの波及、あるいは外傷、手術、悪露の停滞などが原因となっ
 て血kとなり、オ血が阻滞させて化火するためにおこる。
:鑑別点
 午後潮熱、あるいは夜間潮熱。
:随伴症状
 身体のいずれかの部位に腫塊や固定痛(刺痛や絞痛)が存在することもある、口唇が紫暗、口渇少飲、面
 色がどす黒い、肌膚甲錯など。
:舌脈 舌質-紫暗、オ斑、オ点など。脈-渋など。
:弁証-血オ。 :治法-活血化オ。
:取穴例
 太衝(瀉法)、三陰交(瀉法)、膈兪(瀉法)-理気活血。

11.気虚による熱がり・発熱
:病因病機
 元来の虚弱体質、過度の肉体疲労や精神疲労、妊娠出産による体力消耗あるいは久病などによって気虚と
 なると中気が不足するために津液を化生することができなくなって陰津が不足する。その影響で陰陽のバ
 ランスが失調して陽気を制御することができなくなって、陽気が浮越するためにおこる。
:鑑別点
 持続的な微熱。肉体疲労時や精神疲労時に悪化する。
:随伴症状
 倦怠感、脱力感、精神疲労、頭のふらつき、自汗、食欲不振、息切れ、懶言など。
:舌脈 舌質-淡、胖、歯痕、苔-白薄。脈-虚、弱など。
:弁証-気虚。 :治法-補中益気。
:取穴例
 中カン(補法)、足三里(補法)-補中益気。
 合谷(補法)、気海(補法または灸頭鍼(補法))-培補元気。