講演内容 - 泌尿器系症状の鑑別と治療

この回の講演内容は、泌尿器系症状の鑑別と治療というテーマで解説と実技指導をさせていただきます。

泌尿器系症状とは、排尿に関する症状(男女とも)と、男性の性機能に関する症状についてを指します。機能としては全く別の機能ではあるものの、まずは臓腑弁証の基本である虚実寒熱に分類することによって同じ概念を用いることにより、頻尿や尿失禁、排尿困難や排尿痛を始めとした排尿に関する症状、インポテンスや早漏、遺精などの性機能に関する症状、さらに男女の陰部の痒みや痛みなどの症状の鑑別・治療が可能です。

ポイントとしては、泌尿・生殖器系の症状も、必ずしも蔵精・生殖を主り、気化作用を主る腎の作用が低下しているために起こるとは限らないということです。腎の作用が低下していれば腎虚ということになりますが、泌尿器系の症状も、“実”によるものもあるということを念頭に置かなければいけないということです。比較的多い実によるものとしては、湿熱(痰濁)阻滞、肝気欝結、血オなどがあります。これらの場合には補腎よりもまずは去邪を図ることにより下焦および陰部の気機を回復させることが必要です。高齢者は、相対的に腎気は低下します。が、その症状の主たる原因が腎虚とは限らないということは臨床家にとって非常に重要な概念です。

回復させた後に必要であれば、下焦および陰部を補うことにより機能を高める施術を行うことも良いでしょう。いわゆる補腎ということになりますが、もう一つのポイントは腎虚には大きく分けて腎精不足(腎気虚)、腎陰虚、腎陽虚に分類されます。施術時点での状態は皆違うため、当然のことながら治療方法や主穴を変えていかないと悪化させることもあり得ます。

たとえば灸頭鍼などの温法の類は腎陽虚では必ず行うべきで腎気虚の場合には併用も可ですが、腎陰虚の場合には症状や現在の状態を悪化させることが多いです。虚火が上炎していたり、虚熱が陰部に停滞しているのに温法によりその熱状態を強めれば、症状や状態を悪化させるのは当然のことです。これは施術ではなく、中医では誤治といいます。そのような基本的なミスを犯さないためには、基本的な症状の鑑別ができていれば避け<ることは容易です。

泌尿・生殖器系の施術を行う際の局所取穴としては、中極、関元、気海、帰来、次リョウなどが効果的です。すべてを取る必要はありませんが、ポイントを絞って取穴することにより最低限の取穴のみで最大限の効果を引き出すことができます。もちろんある程度の針響を得ることが重要で、中極、関元は陰部に響かせる、気海、帰来は刺鍼局所に、次リョウは下腹部全体に響かせる、さらに針響の強さも調節した上で、適切な補瀉手技を行うことが重要です。それにより年配の方でも最短期間で効果を引き出すことが、誰でも可能になります。
今回の講演ではこれらのことについてさらに詳しく解説と実技指導をさせていただきます。

 

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