便秘(大便秘結、排便困難)
☆ 便秘(大便秘結、排便困難)
このページは、鍼灸師、医師向けの鍼灸治療法を紹介するページです。
便秘や排便に苦労する方は、はりきゅうマッサージ すこやかな森 で治療をお受けいただけます。
本症は、4~7日間排便がない状態を指し、中医では大便秘結という。
似た症状で“排便困難”がある。大便秘結と排便困難は便が出にくいことは同じであるが、排便困難は隔日
あるいは2~3日程度間隔が空くものの、排便の周期には大きな乱れはないあるいは排便をスムーズに行え
ないものを指す。どちらの症状も病因病機は同じであるため、本項でまとめて説明する。
1.胃腸実熱による便秘
:病因病機
陽盛体質の者、あるいは辛いもの、脂濃いものや味の濃いものの過食やアルコールの常飲などによって胃
の気機が阻滞して化熱する、あるいは外感や内傷の熱邪が胃に停滞するために胃熱が生じ、胃熱が大腸に
移って大腸の伝導作用を傷害させるために便秘となる。
:鑑別点
大便秘結、排便困難。胃カン部の灼熱感や不快感。小腹部の脹満感や脹痛(拒按)。
:随伴症状
壮熱、悪心、嘔吐あるいは食べると吐く、口渇少飲または多飲(冷飲を好む)、心煩、不眠など。
:舌脈 舌質-紅、苔-黄、乾燥。脈-洪数、滑実など
:弁証-熱秘。 :治法-清胃腸熱、寛腸通便。
:取穴例
内庭(瀉法)-和胃清熱。天枢(瀉法)、上巨虚(瀉法)-通腸導滞。
2.気滞による便秘
:病因病機
長期にわたりストレスを受け続けたり、突然強い精神的刺激を受けたり、陰血不足のために肝が滋養され
なくなると肝気欝結となり、あるいは長期臥床などのために大腸の気機が阻滞するために便秘となる。
:鑑別点
大便秘結、排便困難。あるいは便意急迫するが排便できない。
:随伴症状
腹部脹満や脹痛、腹部拒按、ゲップや失気が多い、あるいはイライラ感、精神抑欝感、易怒、ため息が多
い、胸脇部や乳房の脹満感や脹痛。
:舌脈 舌質-紅、苔-白薄。脈-弦。
:弁証-気秘。 :治法-疏肝理気、寛腸通便。
:取穴例
太衝(瀉法)、支溝(瀉法)-疏肝理気。天枢(瀉法)、上巨虚(瀉法)-通腸導滞。
列欠(瀉法)-粛肺理気。
3.気虚による便秘
:病因病機
飲食不節、思慮過度、疲労や過労などによって脾気虚となると、大腸の伝導作用が低下するために便秘とな
る。
:鑑別点
便意はあるが排便困難、大便は硬いときもあり軟らかいときもある。
排便に時間がかかり、力むと疲労感を感じる。
:随伴症状
疲労感、無力感、元気がない、懶言、食欲不振、食後腹脹、面色萎黄など。
:舌脈 舌質-淡、胖、歯痕。苔-白薄。脈-虚、弱など。
:弁証-虚秘。 :治法-健脾益気、寛腸通便
:取穴例
中カン(補法)、脾兪(補法)-補中益気。大腸兪(補法)-寛腸通便。肺兪(補法)-補益肺気。
4.血虚による便秘
:病因病機
久病、慢性の出血や産後の失血、脾気虚弱による生血不足、老化や腎陰不足などのために大腸の潤いがなく
なり、そのために伝導作用が弱くなると便秘となる。
:鑑別点
排便困難、便は硬く兎糞状。
:随伴症状
面色や口唇が淡白or面色萎黄、爪が薄くもろい、めまい、不眠、多夢、目の乾きやかすみ、筋の引きつりや
シビレ感、経遅、経量少など。
:舌脈 舌質-淡紅。脈-細など。
:弁証-虚秘。 :治法-補血生津、潤腸通便。
:取穴例
血海(補法)-健脾生血。復溜(補法)、三陰交(補法)-補益精血。大腸兪(補法)-寛腸通便。
5.下焦虚寒による便秘
:病因病機
疲労や過労、久病、老化などによって気を消耗すると火衰となりやすく、その影響で下焦の虚寒となり、大
腸を温煦できなくなるために便秘となる。
:鑑別点
排便困難、大便秘結。温暖を好み、寒冷を嫌う。
:随伴症状
寒がる、四肢の冷え、面色淡白、小便清長など。
:舌脈 舌質-淡、苔-白薄。脈-沈遅で無力など
:弁証-冷秘。 :治法-温補下焦、寛腸通便。
:取穴例
関元(灸または灸頭鍼(補法))、腎兪(灸または灸頭鍼(補法))-温腎壮陽。
大腸兪(補法)、気海(補法)-寛腸通便。