月経期の嘔吐(経行嘔吐)
☆ 月経期の嘔吐(経行嘔吐)
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本症は、月経期のたびに悪心や嘔吐が出現するものを指し、月経が終了するとそれらも止まるものを指し、
中医では経行嘔吐という。ただし、月経期でもたまに悪心や嘔吐が出現する程度のものは、本症には含めな
い。
1.肝胃不和による経行嘔吐
:病因病機
長期にわたってストレスを感じ続けたり、精神的な抑欝を受けたり、突然強い精神的な刺激を受けたり、
陰血不足の状態が続くためことによって肝気欝結となり、肝気が横逆して胃の和降作用を障害するために
おこる。
:鑑別点
月経前や月経期にゲップ、呑酸、嘔吐が頻発する。
:随伴症状
経乱、経量不定、経色暗紅、イライラ感、精神抑欝感、易怒、ため息が多い、胸脇部や少腹部、乳房の脹
満感や脹痛など。
:舌脈 舌質-紅、舌苔-白薄。脈-弦滑など。
:弁証-肝胃不和。 :治法-疏肝和胃、理気止嘔。
:取穴例
太衝(瀉法)-疏肝理気。内関(瀉法)、公孫(瀉法)-理気和胃。足三里(瀉法)-行気和胃。
2.痰濁阻滞による経行嘔吐
:病因病機
脂濃いものや甘いもの、味の濃いものの過食やアルコールの常飲、あるいは外界の湿邪などによって生じ
た痰湿が胃腑に停滞し、和降作用を障害させるためにおこる。
:鑑別点
月経期におこる水様物の嘔吐。水分を摂取すると吐くあるいは気持ちが悪くなる。
:随伴症状
経遅、経血暗紅、量が少なく粘稠で線状物が混じる、手足が湿る、痰が多い、胸苦しい、浮腫、腹脹、食
欲不振、頭重、めまいなど。
:舌脈 舌苔-白膩。脈-滑など。
:弁証-痰濁阻滞。 :治法-化痰和胃、止嘔。
:取穴例
豊隆(瀉法)、陰陵泉(瀉法)-去痰和胃。
内関(瀉法)、中カン(瀉法)、足三里(瀉法)-理気和胃、降逆止嘔。
3.脾気虚による経行嘔吐
:病因病機
飲食不節、思慮過度、疲労や過労などによって脾気虚となると、月経時にはさらに気虚が強まり、その影
響で中気下陥と濁気上昇がおこりやすくなるために経行嘔吐となる。
:鑑別点
経行嘔吐。疲労時に嘔吐が頻発する。
:随伴症状
経早、経血は希薄で淡紅、量が多い、希薄な白帯、疲労感、無力感、食欲不振、泥状便、元気がない、懶
言、食後腹脹、面色萎黄など。
:舌脈 舌質-淡、胖、歯痕、苔-白薄。脈-虚、弱など。
:弁証-脾気虚。 :治法-健脾益胃、止嘔。
:取穴例
脾兪(補法)-健脾益気。中カン(補法)、足三里(補法)-益気健中。
4.胃陰虚による経行嘔吐
:病因病機
辛いものの食べ過ぎ、熱病による津液の損傷、慢性の胃病による陰血の損傷などによって胃が濡養されな
くなって胃陰虚となり、あるいは、出血過多など月経期の傷陰が胃腑に影響するなどによって、胃の和降
作用が失調したためにおこる。
:鑑別点
月経期の乾嘔、食欲はあるが食べられない。
:随伴症状
胃カン部灼熱感または不快感、口渇少飲、便秘、消痩、月経は正常あるいは経早、経血は鮮紅で多いまた
は暗紅で粘稠など。
:舌脈 舌質-紅、舌苔-光剥。脈-細数など。
:弁証-胃陰虚。 :治法-滋養胃陰、止嘔。
:取穴例
内庭(瀉法)-清泄胃熱。中カン(補法)、足三里(補法)-益気健中。太谿(補法)-補益腎陰。
5.胃気虚寒による経行嘔吐
:病因病機
素体に脾虚があるものが冷たい飲食物を摂りすぎたり身体を冷やすなどによって次第に脾胃虚寒となり、
濁気を降ろすことが弱くなるためにおこる。
:鑑別点
経行嘔吐。空腹時に胃カン痛や悪心・嘔吐がおこりやすく、食事をしたり、暖めたり、按じると楽になる。
:随伴症状
経遅、経血が淡色で少ない、薄い帯下、泥状~水様便、食少、清水を吐く、寒がる、四肢の冷え、顔色が
白いなど。
:舌脈 舌質-淡、嫩。脈-沈細など。
:弁証-胃気虚寒。 :治法-健胃温中、止嘔。
:取穴例
神闕(棒灸)-温散寒邪。中カン(補法)、足三里(補法)-益気健中。