認知症

☆ 認知症

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本症は、後天的な脳の器質的障害により、いったん正常に発達した知能、記憶、見当識が後天的に低下
し、感情障害などの人格障害を伴う状態を指す。

1.腎精不足による認知症
:病因病機
 先天不足、久病、重病、不養生、房事過多などによって腎精が不足すると、髄海を満たすことができな
 いために認知症となる。
:鑑別点
 認知症。
:随伴症状
 恍惚状態、腰膝酸軟や歩行困難、白髪、歯の動揺や脱落、ぼんやりする、難聴、脱毛、歯の動揺など。
:舌脈 舌質-淡、苔-白薄。脈-虚、弱で尺脈無力。
:弁証-腎精不足。 :治法-補腎填精。
:取穴例
 腎兪(補法)、太谿(補法)、関元(補法)-補腎倍本、補益精血。絶骨(補法)-補益精髄。
 百会(補法)-昇陽益気。

2.肝腎陰虚による認知症
:病因病機
 精血不足、津液虚損、熱病による傷陰、久病、房事過多、五志過極、飲酒過度などによって肝腎の陰
 虚となり、心神を栄養できなくなるために認知症となる。
:鑑別点
 認知症。
:随伴症状
 目に輝きがない、言葉が遅鈍、動作が遅い、四肢のシビレ感、頬部紅潮、盗汗、五心煩熱、不眠、多夢、
 消痩、腰膝酸軟、便秘、尿が濃いなど。
:舌脈 舌質-紅、舌苔-少or無苔。脈-細数。
:弁証-肝腎陰虚。 :治法-補益肝腎、益髄健脳。
:取穴例
 肝兪(補法)、太谿(補法)、復溜(補法)-補益肝腎、補益精血。風池(補法)-昇陽健脳。
 気海(補法)-培補元気。

3.肝気欝結による認知症
:病因病機
 長期にわたりストレスを受け続けたり、突然強い精神的刺激を受けたり、陰血不足のために肝が滋養さ
 れなくなると肝気欝結となり、その影響で心神の気機も阻滞するために認知症となる。
:鑑別点
 認知症。
:随伴症状
 イライラして動きたがるあるいは恍惚状態となる、易怒や泣き叫んだりと情緒が不安定になる、ため息
 が多い、胸苦しい、少腹部や乳房の脹満感や脹痛など。
:舌脈 舌質-紅、苔-白薄。脈-弦。
:弁証-肝気欝結。 :治法-疏肝理気、益髄健脳。
:取穴例
 太衝(瀉法)、陽陵泉(瀉法)-疏肝理気。内関(瀉法)-寧心安神。気海(補法)-培補元気。
 風池(補法)-昇陽健脳。

4.痰濁阻滞による認知症
:病因病機
 脂濃いものや甘いもの、味の濃いものの過食やアルコールの常飲、あるいは外界の湿邪などによって
 生じた痰湿が中焦に停滞したために清陽が昇らず、濁陰が降りず、そのために心神に影響すると認知
 症となる。
:鑑別点
 認知症。
:随伴症状
 静かで口数が少ない、胸苦しい、水分を飲むと吐く、食欲不振、手足や陰部の湿り、浮腫、痰が多い、
 頭重、身重感、悪心など。
:舌脈 舌苔-白膩。脈-弦滑など。
:弁証-痰濁阻滞。 :治法-去痰降濁、益髄健脳。
:取穴例
 豊隆(瀉法)、陰陵泉(瀉法)-燥湿化痰。中カン(瀉法)-去痰降濁。内関(瀉法)-理気散滞。
 頭維(瀉法)-降濁。風池(補法)-昇陽健脳。