臓腑間関係について

☆ 臓腑間関係について

臓腑と臓腑の間にはどのような協調関係(生理作用)があり、その関係が失調したときにどのような弁証名になるかを説明します。
この関係は臨床上では意外と重要なことも多く、たとえば目の使い過ぎから起こった肝血虚証は腎陰虚を引き起こしやすく、肝血虚証の治療は腎陰も補った方がいいとか、虚寒症状と未消化物を下痢する脾陽虚証は腎陽虚が根本にあるためく、治療の際には温中を図るだけではなく必ず腎陽を補わなければいけないなど、知らないと治療効果が上がりにくいこともあるので、よく理解しておくことが必要です。

・肝と脾
1.肝の疏泄作用が正常に働くことにより、脾胃の昇降・運化作用も健全に行われる
→肝脾不調証、肝胃不和証。
2.脾の気血の生成により肝血は滋養され、肝は体内の血液量を調節することができる
→脾気虚となると肝血虚証となりやすい。

・肝と肺
肺主粛降、肝主昇発-陰陽昇降を保ち、気機の正常な状態を維持する。
1.肝気の欝滞、肝熱は、肝経に沿って上昇し肺に影響しやすい
→肝火犯肺証。
2.肺の粛降作用が失調すると肝気・肝陽の昇発が過度になりやすい。
→肝気犯肺証。

・肝と腎
肝蔵血、腎蔵精-肝血の不足は腎精の欠損を、腎精の不足は肝血の不足を引き起こす
→肝腎陰虚証、肝陽上亢証。

・肝と胆
胆は肝に附属しておりその経脈は相互に連絡する
→肝胆火旺証、肝胆湿熱証。

・心と肝
1.心主血、肝蔵血-心は血液循環を推動し、肝は血液量を調節する。
心血の不足は肝血の不足を、肝血の不足は心血の不足を招きやすい
→心血虚と肝血虚は同時に出現しやすい。
2.心主神志、肝主疏泄-ともに精神情志活動に大きく関与する。
肝火が亢盛となると心火も旺盛となりやすく、心火が亢盛となると肝火も上炎しやすい
→心肝火旺証。

・心と脾
心主血、脾主生血・統血-血の生成と運行を協力して行う。
脾気が虚すと、血の生成の低下や運化作用の低下のために心血が不足し、思慮過度などのために心血が消耗されると脾の生理機能に影響が及ぶ
→心脾両虚証。

・心と腎
1.心火は下降して腎陽が冷えすぎないよう暖め、腎水は上昇して心陰を滋養し、心陽が亢進しすぎないよう冷やす
→心腎不交証。
2.心主血、腎蔵精-血と精は互いに滋生し合い、不足を補い合う。
心血の不足は腎精が補い、腎精が欠損すると心血を補充しにくくなり、その結果脳を満たしにくくなるために失眠、健忘、多夢などの症状が出現する。

・心と肺
心主血、肺主気-血液循環の促進は肺気の援助を受け、肺気の輸布は
心気、心血の援助を受ける→心肺両虚証。

・心と小腸-表裏をなし、心の火熱は小腸に、また小腸の熱は心に影響しやすい。この場合に、口内炎、舌の糜爛、小便短赤、排尿時の尿道灼熱痛などが出現する。

・心と心包
心包は心の外衛であり心を保護する-外邪が心に侵入する過程では、まず心包が発病する
→熱入心包証。

・脾と肺-この関係では、主として気虚と水湿代謝に影響が現れる。
1.脾気虚が肺に影響して宣発・粛降作用に影響が及ぶと、咳喘、多痰、呼吸促迫などの症状が現れる。
2.肺気虚が脾に影響して運化作用に影響が及ぶと、眩暈、面色萎黄、四肢に力が入らないなどの症状が現れる。
※脾気虚から肺気虚、肺気虚から脾気虚→脾肺両虚となりやすい。
3.肺の粛降作用が失調し水湿が停滞すると、脾陽が損傷され水腫、倦怠感、腹脹、便溏などの症状が現れる。

・脾と腎
1.腎陽が虚すと脾陽を温煦できなくなる→脾腎陽虚証。
2.腎の精気は、脾の運化する水穀の精微を補充・化生することで満たされる→脾腎両虚証。

・脾と胃
1.胃主受納、脾主運化-飲食物の消化、吸収および水穀の精微の輸布を行う。
2.胃主降、脾主昇清-胃は糟粕を下部の腸管へ伝導し、脾は水穀から得た精気を肺へ送る。
3.胃は湿潤を好み乾燥を嫌う、脾は乾燥を好み湿潤を嫌う。
これらが正常に保たれることにより人体の消化、吸収機能の維持に大きく関わる。

・肺と腎
1.肺主呼吸、腎主納気-呼吸は肺が主るが、吸気は腎精が充足していて初めて深く吸うことができる
→慢性の肺気虚、呼吸困難、喘息など。
2.肺は水の上源、腎主水→咳逆、喘息が激しく横になれない、水腫。
3.肺と腎の陰液は相互に滋養し合う
→肺腎陰虚証。

・肺と大腸
肺主粛降、大腸主伝導-粛降作用の助けにより大腸の伝導は通暢して正常な排便ができる。また、大腸の伝導が通暢することにより、肺の粛降作用は維持される。

・腎と膀胱
腎気は尿の制約、津液を尿に気化するという膀胱の開閉作用を助ける。
→排尿困難、尿失禁、遺尿、頻尿など。