☆ 産後の浮腫
このページは、鍼灸師、医師向けの鍼灸治療法を紹介するページです。
この症状でお悩みの方は、はりきゅうマッサージ すこやかな森 で治療をお受けいただけます。
本症は、産後に発生する浮腫を指し、妊娠中から浮腫が継続している状態も含まれる。一般的には産後数日
から十数日で自然と消退することが多いが、なかなか消退せず、尚かつ下記のような随伴症状を顕著にとも
なうものを病態とすべきである。
1.湿熱阻滞による産後浮腫
：病因病機
脂濃いものや甘いもの、味の濃いものの過食やアルコールの常飲、外界の湿邪、月経期に性交する、ある
いは肝欝気滞から痰湿阻滞を引きおこすなどによって生じた痰湿が、皮膚に溢れるために浮腫となる。
：鑑別点
浮腫は下肢が主となるが全身に及ぶこともある。身重感をともなう。
：随伴症状
粘稠な黄帯、手足の湿り、浮腫、口が粘る、口渇少飲または多飲（冷飲を好む）、泥状便ですっきり排便
できない、小便短赤など。
：舌脈 舌苔－黄膩。脈－滑数、濡数など。
：弁証－湿熱阻滞。 ：治法－清熱利湿。
：取穴例
中極（瀉法）、陰陵泉（瀉法）－清熱利湿。気海（瀉法）－行気散滞。
2.気滞血オによる産後浮腫
：病因病機
悪露の阻滞、あるいは情緒の抑欝などによって気滞が生じ、そのために血オとなり、その影響で水湿の運
行も阻滞するために浮腫となる。
：鑑別点
浮腫は下肢から始まり、次第に腹部に及ぶ。
：随伴症状
悪露が少なく暗紅、血塊をともなう、腹部に固定性の疼痛がありひどくなると下腹部腫塊を形成する、精
神抑欝、易怒、イライラ感、乳房の脹満や脹痛など。
：舌脈 舌質－紫暗、オ斑、オ点など。脈－渋など。または舌脈正常。
：弁証－気滞血オ。 ：治法－理気活血。
：取穴例
太衝（瀉法）、三陰交（瀉法）－理気活血。中極（瀉法）－通利小便。
3.気血両虚による産後浮腫
：病因病機
分娩時の出血過多で精気が虚し、その影響で津液の輸布が低下するために浮腫となる。
：鑑別点
全身の浮腫となる。
：随伴症状
めまい、面色淡白または萎黄、口唇や爪の色が淡白、不眠、心悸、精神疲労、倦怠感、無力感、息切れ、
懶言、自汗など。
：舌脈 舌質－淡。脈－細弱など。
：弁証－気血両虚。 ：治法－補益気血、利水。
：取穴例
脾兪（補法）、血海（補法）－健脾生血。関元（補法）－温補腎陽。中極（補法）－化気行水。
4.脾虚湿困による産後浮腫
：病因病機
飲食不節、思慮過度、疲労や過労、分娩時の体力損耗によって脾気虚となり、運化作用が低下するために
湿邪がたまりやすくなり、湿濁が皮膚に流れ込むために浮腫となる。
：鑑別点
顔面をはじめとした 全身の浮腫となる。
：随伴症状
希薄な白帯、口渇しても飲みたくない、面色萎黄、疲労感、無力感、食欲不振、泥状便、元気がない、懶
言、食後腹脹など。
：舌脈 舌質－淡、胖、歯痕、苔－白膩。脈－虚、緩など。
：弁証－脾虚湿困。 ：治法－健脾利水。
：取穴例
陰陵泉（補法）、脾兪（補法）－健脾利水。気海（補法）－培補元気。中極（補法）－化気行水。
5.腎気虚による産後浮腫
：病因病機
出産時の失血過多による精血の不足、先天不足、房事過度、久病などにより腎精が不足すると、腎の気化
作用も低下するために浮腫となる。
：鑑別点
腰から下肢にかけて著明だが、全身に及ぶ浮腫。
：随伴症状
腰膝酸軟、めまい、頭のふらつき、耳鳴り、難聴、面色が黒くなるなど。
：舌脈 舌質－淡。脈－沈細などで尺脈無力。
：弁証－腎気虚。 ：治法－温腎利水。
：取穴例
関元（補法）、太谿（補法）、腎兪（補法） －温補腎陽、補益精血。中極（補法）－化気行水。