テネスムス(裏急後重)

投稿者: | 2017年10月18日

☆ テネスムス(裏急後重)

このページは、鍼灸師、医師向けの鍼灸治療法を紹介するページです。
すっきり排便できない、残便感でお悩みの方は、はりきゅうマッサージ すこやかな森 で治療をお受け
いただけます。

本症は、西医ではテネスムス、俗にしぶり腹と呼ばれるもので、中医では裏急後重という。“裏急”は腹痛
をともなって便意が急迫すること、“後重”は排便時に切迫し、肛門が重墜して排便しにくいことをいう。
痢疾の症状の一つであるが、大腸病変でもおこる症状である。

1.大腸湿熱によるテネスムス
:病因病機
 脂濃いものや甘いもの、味の濃いものの過食やアルコールの常飲、外界の湿邪の侵襲などによって生じた
 湿熱が大腸に下注して停滞するために裏急後重となる。
:鑑別点
 裏急後重。悪臭が強く黄色い粥状の便あるいは膿血性の下痢。肛門の重墜感と灼熱感。
:随伴症状
 小便短赤、口渇少飲または多飲(冷飲を好む)、身熱、腹部膨満感や腹痛など。
:舌脈 舌質-紅。舌苔-黄膩。脈-滑数など
:弁証-大腸湿熱。 :治法-清熱利湿。
:取穴例
 天枢(瀉法)、上巨虚(瀉法)-通腸導滞。中極(瀉法)、陰陵泉(瀉法)-清熱利湿。
 曲池(瀉法)-清熱通腑。

2.気滞によるテネスムス
:病因病機
 湿熱やオ血、熱邪や寒邪の阻滞、元来の肝気欝結の体質のために、大腸の気機が阻滞するために裏急後
 重となる。
:鑑別点
 裏急後重。腹が張って遊送性の痛みがあり、甚だしくなると胸肋に放散する。排便後には腹痛は軽減する。
:随伴症状
 すっきり排便できない、肛門の重墜感、膿血便など、全身症状を伴わないこともある。
:舌脈 舌質-紅、苔-白薄。脈-弦。
:弁証-気滞。 :治法-理気、通腸導滞。
:取穴例
 天枢(瀉法)、上巨虚-(瀉法)-通腸導滞。太衝(瀉法)、気海(瀉法)-行気散滞。

3.陰虚内熱によるテネスムス
:病因病機
 精血不足、津液虚損、熱病による傷陰、久病、房事過多、五志過極、飲酒過度などによって陰虚となって
 内熱が生じ、虚熱が大腸に停滞するためにおこる。
:鑑別点
 裏急後重。腹部の持続的な隠痛、排便時に力んでも便が出ないか数滴のゼリー状の粘液が出るだけ、
 または膿血便。
:随伴症状
 腹部鈍痛、目の乾き、頬部紅潮、盗汗、潮熱、五心煩熱、不眠、多夢、消痩、腰膝酸軟、便秘、尿が濃い
 など。
:舌脈 舌質-紅、舌苔-少苔または剥苔。脈-細数など。
:弁証-陰虚内熱。 :治法-滋陰清熱。
:取穴例
 復溜(先瀉後補)-滋陰降火。太谿(補法)-補益腎陰。天枢(瀉法)、上巨虚-(瀉法)-通腸導滞。

4.中気下陥によるテネスムス
:病因病機
 肉体疲労、精神疲労、慢性の下痢、分娩過多、産後の消耗などによって元気が損耗し、そのために気虚
 下陥となると大腸の気機を推動できなくなるために裏急後重となる。
:鑑別点
 裏急後重。腹部の持続的な隠痛。肛門の下墜感、甚だしいときは脱肛となる。
 これらの症状は疲労痔に悪化する。
:随伴症状
 無力感、脱力感、精神疲労、息切れ、懶言、食欲不振、大便溏薄、カン腹下墜感、内臓下垂、身体消痩、
 めまい、面色萎黄など。
:舌脈 舌質-淡、胖、歯痕など。脈-緩、虚など
:弁証-中気下陥。 :治法-補中益気、固渋。
:取穴例
 中カン(補法)、合谷(補法)、足三里(補法)-補中益気、昇陽挙陥
 大腸兪(補法または加灸)-健固腸腑。