希薄な月経血(経質清稀)

投稿者: | 2017年10月3日

☆ 希薄な月経血(経質清稀)

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本症は、月経血の色調は様々ではあるが、性状がさらさらと、希薄な状態を指し、中医では経質清稀とい
う。

1.血虚による経質清稀
:病因病機
 脾虚による生血不足、失血過多、久病、多産による生血の消耗などによって血の生成が不足し、衝任胞
宮を栄養することができなくなるために経質が清稀となる。
:鑑別点
 経質清稀。経遅、経量は少なく淡紅。
:随伴症状
 月経後半あるいは月経終了後に下腹部隠痛(喜按)、面色萎黄または淡白で不華、口唇や爪が淡白、不
 眠、めまい、目かすみ、四肢のシビレ感など。
:舌脈 舌質-淡。脈-細など。
:弁証-血虚。 :治法-養血調経。
:取穴例
 血海(補法)、三陰交(補法)-健脾生血。気海(補法)、帰来(補法)-調補衝任。

2.脾気虚による経質清稀
:病因病機
 飲食不節、思慮過度、疲労や過労などによって脾気虚となると、気血生化が十分に行われないために経
 質が清稀となる。
:鑑別点
 経質清稀。経早、経血は淡紅で量が多い。
:随伴症状
 希薄な白帯、疲労感、無力感、食欲不振、泥状便、元気がない、懶言、食後腹脹、面色萎黄など。
:舌脈 舌質-淡、胖、歯痕、苔-白薄。脈-虚、弱など。
:弁証-脾気虚。 :治法-健脾益気、養血調経。
:取穴例
 脾兪(補法)、三陰交(補法)-健脾益気。気海(補法)、帰来(補法)-調補衝任。

3.肝腎陰虚による経質清稀
:病因病機
 出血過多や精血不足、津液虚損、熱病による傷陰、久病、房事過多、五志過極、飲酒過度などによって
 肝腎陰虚となると精血が消耗し、血海が空虚となるために経質が清稀となる。
:鑑別点
 経質清稀、経色は鮮紅色。陰部の熱感を伴う。
:随伴症状
 経量は少ない、目の乾き、頬部紅潮、盗汗、潮熱、五心煩熱、不眠、多夢、消痩、腰膝酸軟、便秘、尿
 が濃い、手足の引きつりなど。
:舌脈 舌質-紅、嫩。舌苔-少or無苔。脈-細数で無力。
:弁証-肝腎陰虚。 :治法-滋補肝腎、調補衝任。
:取穴例
 太谿(補法)、照海(補法)-滋陰補腎。肝兪(補法)-補養肝血。帰来(補法)-調補衝任。

4.衝任虚寒による経質清稀
:病因病機
 陽虚の体質、房室過度、若年の出産、出産過多、気虚からの発展などによって胞宮の虚寒が生じ、胞宮
 を栄養できなくなるために経質が清稀となる。
:鑑別点
 経質清稀。月経後半や月経終了後に下腹部冷痛(隠痛、喜按)。温めたり押さえると痛みは軽減し、冷
 やすと痛みは増強する。
:随伴症状
 経遅、経血淡紅あるいは暗淡、量は少ない、寒がる、下腹部が冷える、下腹部の下墜感、腰が冷えてだ
 るい、量が多く水様の白帯、小便清長、下痢など。
:舌脈 舌質-淡、舌苔-白薄。脈-沈、遅など。
:弁証-衝任虚寒。 :治法-温経散寒、調補衝任。
:取穴例
 関元(補法または灸頭鍼(補法)、脾兪(補法)-温補脾腎。子宮(補法)、帰来(補法)-調補衝任。

5.寒湿阻滞による経質清稀
:病因病機
 湿地での生活、月経期に雨にうたれる、身体を冷やすなどにより寒湿の邪が衝任に侵入して胞宮に停滞
 し、胞宮を栄養することができなくなるためおこる実寒証である。
:鑑別点
 経質清稀。月経期に下腹部の冷えと痛み(拒按)を感じ、温めると軽減する。
:随伴症状
 経遅、経血は暗紅~暗黒色で血塊が混じり量は少ない、白色で多量の帯下、寒がる、身体が重い、浮腫、
 小腹部の脹悶感や痛み、泥状便~水様便など。
:舌脈 舌苔-白膩。脈-沈遅など。
:弁証-寒湿阻滞。 :治法-温化化湿、調経活血。
:取穴例
 神闕(棒灸)-温補下元。陰陵泉(瀉法+灸頭鍼)-温化利水。気衝(瀉法)-通調血室。