肺の生理作用と病理状態

投稿者: | 2017年8月23日

☆肺の生理作用と病理状態

1.気を主り、呼吸を主る
気を主る作用は、気の生成とりわけ宗気の生成に関与する。肺から吸入される清気と、脾胃から運化された水穀の気が結合することによって生成される宗気は“胸中の気”とも言われ、発声、言語、呼吸に深く関与する。また、気を主るとは肺だけのことではなく、心の血脈を主る作用と協調し、肺より下部に位置する臓腑に気を降ろすことによって各臓腑を栄養し、それにより各臓腑の気を強めることから肺は一身の気を主るとも言われている。
呼吸を主るとは、肺のリズミカルな呼吸を維持することであり、リズミカルな“呼”と“吸”は全身の気の昇降出入に対して重要な役割を担っている。ただし、リズミカルな呼吸は腎の納気作用の補助を受けて初めて実現し、また、腎の納気は“吸気”を、肺の呼吸を主るは“呼気”を主に行う。
これらの作用が失調すると、呼吸が浅くなる、息切れ、声に力がない、甚だしくなると喘息などの症状が出現する。

2.宣発と粛降を主る
①宣発(宣散)作用は、体内の濁気を排出すると同時に、脾から運輸されてきた津液と水穀の精微を全身に散布するが、主として皮毛に到達させ、衛気を強化してソう理の開閉を調節し、それによって外邪の侵襲から身体を護る作用である。
②粛降作用は、吸入した清気と脾から運輸されてきた津液と水穀の精微を、肺よりも下部に位置する臓腑まで到達させ、それぞれの臓腑を栄養し、それにより各臓腑は正しく機能することができる。最終的には膀胱まで気を降ろし、不要な濁気を尿として排泄する。また、気を下降させる過程で、鼻竅、咽喉、気管などいわゆる肺系の清潔を保つ。
宣発作用と粛降作用は、相互に依存し合い、相互に制御しあっている。また、病理的にも相互に影響しあう。
これらの作用が失調すると、咳嗽、呼吸不利、胸悶、鼻閉、無汗または自汗、尿量減少、排尿困難などが出現し、感冒にかかりやすくなるなど外邪の侵入を受けやすくなる。

3.通調水道を主る
宣散作用と粛降作用は、協調して体内における水液の輸送、排泄を疏通、調節することから“肺は水の上源”と言われている。
  脾から輸送された水液は、肺気の宣発作用によって全身に転輸され、その一部は汗として排泄される。一方では不要な水液は肺の粛降作用によって膀胱に輸送され、腎と膀胱の気化作用によって尿として排泄される。
この作用が失調すると、浮腫、無汗、尿量減少、排尿困難などが出現する。

4.百脈を朝じ、治節を主る
百脈を朝じるとは、全身の血液は経脈を通じて肺に集まり、肺の呼吸を通じて気体の交換が行われ、再び全身へ輸送される。その結果全身は栄養されると言うことを表現したものである。
治節を主るとは、上述の肺のそれぞれの作用を統括し、それぞれの機能がスムーズに出現するよう管理・調節すると言うことを表現したものである。

5.憂は肺の志
憂は肺の志とされている。また、憂と悲は異なる情志変化であるが、人体の生理活動に与える悪影響が非常に似ていることからどちらも肺の志とされている。

6.涕は肺の液
涕は鼻粘膜から分泌される液体で鼻竅を潤す作用がある。正常化では鼻涕は外には漏れないが、肺寒では水様の鼻汁が増え、肺熱では黄色く粘稠な鼻汁となり、肺燥では鼻汁が減少して乾燥が強くなる。

7.体は皮に合し、華は毛にある
肺の生理機能が充実していれば、一身の表である皮毛は衛気と津液によって保護されて潤されており、外邪の侵入を防ぐことができる。
肺気の失調は、汗をかきやすくなる、感冒にかかりやすくなる、皮膚が荒れてかさつきやすくなるなどとなる。

8.鼻に開竅する
肺の門戸と言われる鼻と喉は互いに通じており肺に連絡している。肺気が充足していれば呼吸、嗅覚、発声は正常に行われるが、肺系に邪気が阻滞したり、肺気が不調和となると鼻づまり、鼻汁、くしゃみ、のどの痛みや痒み、声に力がなくなる、かすれ声などの症状が出現する。