いつも眠い(嗜眠)

投稿者: | 2017年10月25日

☆ いつも眠い(嗜眠)

このページは、鍼灸師、医師向けの鍼灸治療法を紹介するページです。
この症状でお悩みの方は、はりきゅうマッサージ すこやかな森 で治療をお受けいただけます。

本症は、昼夜を問わず眠たがり、呼ぶとすぐに目覚めるがまた眠ってしまう状態を指し、中医では嗜眠、
嗜睡などと呼ぶ。ただし、本症は元気がなくて眠くなる状態であり、意識障害をともなっていたり、昏睡
となっている場合には本項に属さない。

1.痰濁阻滞による嗜眠
:病因病機
 脂濃いものや甘いもの、味の濃いものの過食やアルコールの常飲、あるいは外界の湿邪などによって
 生じた痰湿が中焦に停滞したために清陽が昇らず、濁陰が降りず、そのために心神に影響すると嗜眠
 となる。
:鑑別点
 身体が非常に重だるく、いつも眠い。
:随伴症状
 胸苦しい、水分を飲むと吐く、食欲不振、手足や陰部の湿り、浮腫、痰が多い、頭重、悪心など。
:舌脈 舌苔-白膩。脈-滑など。
:弁証-去痰降濁。 :治法-去痰降濁。
:取穴例
 豊隆(瀉法)、陰陵泉(瀉法)-燥湿化痰。中カン(瀉法)-去痰降濁。頭維(瀉法)-降濁。

2.脾虚湿困による嗜眠
:病因病機
 飲食不節、過労、思慮過度などによって脾気虚となると、運化作用が低下するために湿邪が停滞しや
 すくなって中焦に停滞し、そのために清陽が上らず、濁気が降りず、その影響で心神が栄養されない
 ために嗜眠となる。
:鑑別点
 疲労感が強く、身体が重だるくいつも眠い。
:随伴症状
 浮腫、口渇しても飲みたくない。疲労感、無力感、食欲不振、泥状便、元気がない、懶言、食後腹脹、
 面色萎黄など。
:舌脈 舌質-淡、胖、歯痕、苔-白膩。脈-虚、緩など。
:弁証-脾虚湿困。 :治法-健脾利湿。
:取穴例
 中カン(補法)、足三里(補法)-補中益気。陰陵泉(補法)、脾兪(補法)-健脾利湿。

3.心脾両虚による嗜眠
:病因病機
 労倦、飲食不節などによって脾を損傷すると心の機能も低下しやすくなる、また思慮過度や心配事が
 続くなどによって心血を消耗すると脾の機能も低下しやすくなる。このために心脾両虚となると後天
 の精を化生することができず、その影響で心神を栄養することができなくなるために嗜眠となる。
:鑑別点
 疲労感が強く、いつも眠い。
:随伴症状
 心悸、多夢、精神不安、精神疲労、食欲不振、大便溏薄、易疲労、無力感、面色不華、月経不定、経
 量不定など。
:舌脈 舌質-淡、舌苔-白薄。脈-虚弱など。
:弁証-心脾両虚。 :治法-補益心脾。
:取穴例
 神門(補法)、三陰交(補法)-補益心脾。脾兪(補法)-健脾益気。百会(補法)-昇陽益気。

4.腎陽虚による嗜眠
:病因病機
 腎気虚からの発展、久病、先天不足、房事過多、外邪による陽気の損傷などによって腎陽が虚損し、
 陽虚陰盛となる影響で嗜眠となる。
:鑑別点
 元気がなく、いつも眠い。
:随伴症状
 寒がる、四肢や腰腹部の冷え、未消化便を下痢する、五更泄瀉、小便清長、下腹部冷痛、浮腫、腰膝
 酸軟、懶言、精神不振、倦怠無力感など。
:舌脈 舌質-淡、嫩、舌苔-滑。脈-沈遅で無力。
:弁証-腎陽虚。 :治法-温補腎陽。
:取穴例
 関元(灸頭鍼(補法))、腎兪(補法)-温腎壮陽。
 気海(補法)、合谷(補法)、百会(補法)-昇陽益気。