月経期の下痢(経行泄瀉)

投稿者: | 2017年10月7日

☆ 月経期の下痢(経行泄瀉)

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この症状でお悩みの方は、はりきゅうマッサージ すこやかな森 で治療をお受けいただけます。

本症は、月経期に泥状便~水様便となり、月経が終了すると止むものを指し、中医では経行泄瀉と呼ぶ。
ただし、月経期に胃腸の不良によっておこるものや、月経周期と無関係なものは本症には含めない。ほとん
どのものが長年にわたって反復し、自然と治癒することはまれである。脾虚がベースとなっておこることが
多いために、放っておくと健康に重大な支障が生じることがあるため、早めの改善が必要である。

1.肝脾不調による経行泄瀉
:病因病機
 長期にわたってストレスを感じ続けたり、精神的な抑欝を受けたり、突然強い精神的な刺激を受けたり、
 陰血不足の状態が続くためことによって肝気欝結となり、肝気が横逆して脾の運化作用を失調させ、清濁
 の必別ができなくなるために下痢がおこる。
:鑑別点
 月経前に腹痛を伴った泥状~水様便が生じ、排便後に腹痛は消失する。
:随伴症状
 経乱、経量も不定あるいは経早、経血淡紅希薄で量が多い、月経前に乳房が脹る、月経中は下腹部が脹っ
 て痛む、精神抑欝あるいは易怒、食欲不振など。
:舌脈 舌苔-薄膩。脈-弦、濡など。
:弁証-肝脾不調。 :治法-疏肝健脾、止瀉。
:取穴例
 太衝(瀉法)、外関(瀉法)-疏肝理気。脾兪(補法)、中カン(補法)-健脾益気。

2.脾気虚による経行泄瀉
:病因病機
 飲食不節、思慮過度、疲労や過労などによって脾気虚となると、月経時にはさらに気虚が強まり、そのた
 めにさらに中気が下陥して湿濁が停滞するために泄瀉となる。
:鑑別点
 月経中に泥状便となり、排便回数が増加する。
:随伴症状
 経早、経血は希薄で淡紅、量が多い、希薄な白帯、疲労感、無力感、食欲不振、泥状便、元気がない、懶
 言、食後腹脹、面色萎黄など。
:舌脈 舌質-淡、胖、歯痕、苔-白薄。脈-虚、弱など。
:弁証-脾気虚。 :治法-健脾益気、止瀉。
:取穴例
 脾兪(補法)、陰陵泉(補法)-健脾利水。中カン(補法)、足三里(補法)-補中益気。

3.脾腎陽虚による経行泄瀉
:病因病機
 労倦内傷、久病虚損、久瀉久痢、房室過度などによって脾気と腎気がともに虚して腎陽が脾陽を温煦でき
 なくなり、その影響で運化作用が低下するために下痢がおこる。
:鑑別点
 月経期に泥状~未消化便となる。下腹部痛(隠痛、喜按)温めたり押さえると痛みは軽減し、冷やすと痛
 みは増強する。
:随伴症状
 経遅、経血淡紅で量が少ない、寒がる、四肢や腰腹部の冷え、量が多く水様の白帯、精神不振、腰膝酸軟、
 食欲不振、五更泄瀉、小便不利など。
:舌脈 舌質-淡、胖大、苔-白薄。脈-沈遅で無力など。
:弁証-脾腎陽虚。 :治法-温補脾腎、止瀉。
:取穴例
 関元(補法または灸頭鍼(補法)、脾兪(補法)-温補脾腎。
 中カン(補法)、足三里(補法)-補中益気。