嘔吐と下痢(霍乱、上吐下瀉)

投稿者: | 2017年10月19日

☆ 嘔吐と下痢(霍乱、上吐下瀉)

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本症は、嘔吐と水様便の下痢が同時にあるいは交互に発生するものを指し、中医では霍乱、上吐下瀉あるい
は吐瀉という。病因としては六淫によるもの、臓腑の失調によるもの、西医でいう食中毒によるものなど幅
広い原因によっておこる。

1.暑湿による霍乱
:病因病機
 暑くて湿気の多い土用や夏の頃に多い。暑湿穢濁の邪が侵入して中焦に停滞し脾胃の昇降が失調して発
 生する。邪気が胃を犯して嘔吐し、同時に水湿が大腸に下迫して下痢をおこす。
:鑑別点
 急激な嘔吐と下痢。腹痛は絞痛で強い。悪臭のする黄色の水様便あるいは粘液便を下痢する。
:随伴症状
 胃カン部のつかえ、身熱不揚、顔面紅潮、煩渇、身重感、小便短赤など。悪寒を伴うこともある。
:舌脈 舌質-紅、舌苔-黄膩。脈-滑数、洪大など。
:弁証-暑湿。 :治法-清暑利湿、蕩滌穢濁。
:取穴例
 委中(瀉法)、曲沢(瀉法)-清暑解毒。天枢(瀉法)、中カン(瀉法)-蕩滌穢濁。

2.胃カン食滞による霍乱
:病因病機
 暴飲暴食をする、不衛生なものを飲食する、あるいは冷たいものや生もの、甘いもの、味の濃いものや油も
 のを摂りすぎたために食滞が生じ、そのために脾胃の機能が障害されて昇降が失調するために霍乱となる。
:鑑別点
 腐酸臭のする嘔吐と下痢。
:随伴症状
 胃カン痛(脹痛)、胃カン部拒按、腐酸臭のするアイ気、厭食、矢気など。吐くとこれらの症状は軽減す
 る。
:舌脈 舌苔-厚膩。脈-滑、弦滑など。
:弁証-胃カン食滞。 :治法-消食導滞。
:取穴例
 下カン-瀉法-消食導滞。天枢(瀉法)、中カン(瀉法)、公孫(瀉法)-開結導滞、寛腸和胃。

3.寒湿阻滞による霍乱
:病因病機
 なま物や冷たい物の過食、雨に打たれて身体を冷やす、長期間の湿地での生活などによって寒湿の邪が
 中焦に侵襲して脾胃の昇降機能が障害されたために霍乱となる。
:鑑別点
 急激な水様物の嘔吐や水様の下痢。臭気は少ない。腹痛(拒按)があり、暖めると軽減し、冷やすと悪化す
 る。
:随伴症状
 寒がる、小便不利、浮腫、食欲不振、胸や腹がつかえて脹る、水様の痰など。
:舌脈 舌苔-白膩。脈-濡、緩など。
:弁証-寒湿阻滞。 :治法-温化化湿。
:取穴例
 神闕(棒灸)-温散寒邪。豊隆(瀉法)-去痰降濁。内関(瀉法)-理気散滞。天枢(瀉法)-通腸導滞。

4.脾陽虚による霍乱
:病因病機
 元来脾胃気虚があるためにそれが進行する、あるいはなま物や冷たいものを食べすぎたため、または寒い
 ところに長くいたり身体を冷やしたために脾陽虚となり、そのために脾の運化作用、胃の和降作用が失調
 すると霍乱となる。
:鑑別点
 慢性的におこる嘔吐 下痢。排便は水様便や未消化便。症状は暖めると軽減し冷やすと悪化する。
:随伴症状
 寒がる、腹部冷痛、水様便または未消化便を下痢する、倦怠感、脱力感、面色萎黄、腹脹、食欲不振、浮
 腫など。
:舌脈 舌質-淡、胖大。舌苔-白。脈-沈遅で無力など。
:弁証-脾陽虚。 :治法-健脾助陽
:取穴例
 神闕(棒灸)-温散寒邪。関元(灸または灸頭鍼(補法))、脾兪(補法)-温補脾腎。