生理痛(痛経)

投稿者: | 2017年10月3日

☆ 生理痛(痛経)

このページは、鍼灸師、医師向けの鍼灸治療法を紹介するページです。
生理痛でお悩みの方は、はりきゅうマッサージ すこやかな森 で治療をお受けいただけます。

生理痛は、月経前後および月経期の強い下腹部痛や腰痛を指し、中医では痛経、あるいは経行腹痛という。
ただし、ある程度の月経時の痛みは正常範囲であり、痛みによって正常な日常生活を営むことができない状
態が病態となる。

1.肝気欝結による生理痛
:病因病機
 長期にわたってストレスを感じ続けたり、精神的な抑欝が続いたり、突然に強い精神的ショックを受けたり、
 陰血不足などによって肝気欝結となると、胞宮の気機も阻滞するために痛経となる。
:鑑別点
 月経前や月経期におこる下腹部の脹痛。
:随伴症状
 経乱、経量不定、経色暗紅、イライラ感、精神抑欝感、易怒、ため息が多い、胸脇部や乳房の脹満感や脹
 痛など。
:舌脈 舌質-紅、苔-白薄。脈-弦。
:弁証-肝気欝結。 :治法-疏肝理気、止痛。
:取穴例
 太衝(瀉法)、支溝(瀉法)、陽陵泉(瀉法)-疏肝理気。気海(瀉法)-行気散滞。

2.肝火上炎による生理痛
:病因病機
 長期にわたるストレスや精神的な抑欝、突然に強い精神的刺激を受けるなどによって肝気欝結となり、肝欝
 の状態が続くことによって化火して肝火上炎となる。そのために発生した実熱が胞宮の気機を阻滞させるた
 めに痛経となる。
:鑑別点
 月経前や月経期におこる下腹部の脹痛。
:随伴症状
 経早、経血は鮮紅で量が多いor暗紅で粘稠、面紅目赤、口渇多飲(冷飲を好む)、胸脇部灼熱感、口苦、イ
 ライラ感、易怒、頭痛、めまい、便秘、小便黄赤など。
:舌脈 舌質-紅、苔-黄。脈-弦数。
:弁証-肝火上炎。 :治法-清泄肝火、調経止痛。
:取穴例
 行間(瀉法)-清泄肝火、陽陵泉(瀉法)-疏肝利胆。血海(瀉法)-清熱涼血。気海(瀉法)-行気散滞。

3.血オによる生理痛
:病因病機
 肝気欝結、寒邪や熱邪、湿邪などの停滞からの波及、あるいは外傷、手術、悪露の停滞などが原因となって
 オ血が生じ、胞宮に停滞するために痛経となる
:鑑別点
 下腹部の強い痛み(刺痛あるいは絞痛)。腹部圧痛(拒按)を伴い血塊が排出されると痛みは軽減する。
:随伴症状
 経遅、経血紫暗で量が少なく血塊が混じる、下腹部痛は固定性で、甚だしいときは腹部に腫塊を形成する。
:舌脈 舌質-紫暗、オ斑、オ点など。脈-渋など。または舌脈正常。
:弁証-血オ。 :治法-活血化オ、止痛。
:取穴例
 太衝(瀉法)、三陰交(瀉法)-理気活血。 気海(瀉法)-行気散滞。

4.痰湿による生理痛
:病因病機
 脂濃いものや甘いもの、味の濃いものの過食やアルコールの常飲、外界の湿邪、月経期に性交する、ある
 いは肝欝気滞から痰湿阻滞を引きおこすなどによって生じた痰湿が、胞宮に侵入するために痛経となる。
鑑別点
 月経前や月経期におこ る下腹部の重痛、陰部の灼熱感を伴うこともある。手足や陰部、全身の湿りを伴う。 
:随伴症状
 経遅、経血暗紅、経量が少なく粘稠で線状物が混じる、粘稠な白帯または黄帯、浮腫、痰が多い、胸苦しい、
 水分を飲むと吐く、食欲不振、頭重、めまいなど。。
:舌脈 舌苔-白膩。脈-滑など。
:弁証-痰湿阻滞 :治法-去痰降濁、調経止痛。
:取穴例
 豊隆(瀉法)-化痰降濁。気海(瀉法)、中極(瀉法)-行気利水、通調胞宮。気海(瀉法)-行気散滞。

5.寒湿阻滞による生理痛
:病因病機
 月経期に雨にうたれたり身体を冷やす、長期間の湿地での生活などにより寒湿の邪が衝任に侵入して胞宮
 に停滞し、経血を凝滞させるために痛経となる実寒証である。
:鑑別点
 月経前や月経期に冷えると下腹部痛(拒按)が増悪し、暖めると軽減する。
:随伴症状
 経遅、経血は暗紅~暗黒色で血塊が混じり量は少ない、白色で多量の帯下、寒がる、身体が重い、浮腫、
 小腹部の脹悶感や痛み、泥状便~水様便など。
:舌脈 舌苔-白膩。脈-沈遅など。
:弁証-寒湿阻滞。 :治法-温化化湿、止痛。
:取穴例
 神闕(棒灸)-温補下元。陰陵泉(瀉法+灸頭鍼)-温化利水。気海(瀉法)-行気散滞。

6.衝任虚寒による生理痛
:病因病機
 陽虚の体質、房室過度、若年の出産、出産過多、気虚が生じて胞宮を栄養できないなどから胞宮の虚寒が生
 じ、胞宮を温煦できなくなるために痛経となる。
:鑑別点
 月経後半や月経終了後に下腹部冷痛(隠痛、喜按)、暖めたり押さえると軽減する。
:随伴症状
 経遅、経血希薄で淡紅、量は少ない、寒がる、普段から下腹部が冷える、下腹部の下墜感、腰が冷えてだる
 い、量が多く水様の白帯、小便清長、下痢など。
:舌脈 舌質-淡、舌苔-白薄。脈-沈、遅など。
:弁証-衝任虚寒。:治法-温経散寒、止痛。
:取穴例
 関元、腎兪に灸または灸頭鍼(補法)-温補腎陽。気海(補法)、子宮(補法)-調補衝任。

7.気血両虚による生理痛
:病因病機
 飲食不節、疲労・過労、思慮過度、久病などによって気虚となり、同時に慢性病による体力の消耗、慢性的な出
 血、多産による精血の消耗などのために血虚となり、気血両虚となって胞宮を栄養できなくなるために痛経となる。
:鑑別点
 月経期あるいは月経終了後に下腹部の隠痛を感じ、暖めたり押さえると軽減する。
:随伴症状
 経遅、経血が希薄で淡色、経量不定、めまい、面色淡白または萎黄、口唇や爪の色が淡白、不眠、心悸、精神
 疲労、倦怠感、無力感、息切れ、懶言、自汗など。
:舌脈 舌質-淡。脈-細弱など。
:弁証-気血両虚。 :治法-気血双補、調補衝任。
:取穴例
 脾兪(補法)、血海(補法)-健脾生血。気海(補法)-培補元気。子宮(補法)-調補衝任。

8.肝腎陰虚による生理痛 
:病因病機
 出血過多や精血不足、津液虚損、熱病による傷陰、久病、房事過多、五志過極、飲酒過度などによって陰津を
 損傷して肝腎陰虚となり、さらに月経によって胞宮が虚して栄養できなくなるために痛経となる。
:鑑別点
 月経期あるいは月経終了後に下腹部の鈍痛を感じる。陰部の熱感を伴う。
:随伴症状
 経量は少ない、目の乾き、頬部紅潮、盗汗、潮熱、五心煩熱、不眠、多夢、消痩、腰膝酸軟、便秘、尿が濃い、手
 足の引きつりなど。
:舌脈 舌質-紅、舌苔-少or無苔。脈-細数。
:弁証-肝腎陰虚。 :治法-滋補肝腎、止痛。
:取穴例
 太谿(補法)、照海(補法)-滋陰補腎。肝兪(補法)-補養肝血。帰来(補法)-摂胞固脱。

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