悪露滞留(悪露不下)

投稿者: | 2017年10月17日

☆ 悪露滞留(悪露不下)

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本症は、悪露が停滞したため排泄が少ない状態を指し、中医では悪露不下という。悪露が停滞して排泄され
ないと、子宮内の細菌感染の可能性が高くなり、子宮内膜炎などの罹患率が上がるため、また古典では心、
肺、胃に悪影響を及ぼすとされており、早めの改善が必要である。

1.血オによる悪露滞留
:病因病機
 手術、外傷あるいは肝気欝結、寒邪や熱邪、湿邪などの停滞からの波及などが原因となってオ血が生じ、
 胞宮に停滞するためにおこる。
:鑑別点
 悪露の排出が非常に少なく、紫暗色で血塊が混じる。
:随伴症状
 下腹部の強い痛み(刺痛あるいは絞痛)を伴い拒按、甚だしいときは下腹部に腫塊を形成するなど。
:舌脈 舌質-紫暗、オ斑、オ点など。脈-渋など。または舌脈正常。
:弁証-血オ。 :治法-活血化オ、調経。
:取穴例
 三陰交(瀉法)、太衝(瀉法)-理気活血。気海(瀉法)-行気散滞。次リョウ(瀉法)-駆邪散滞。

2.気滞による悪露滞留
:病因病機
 出産時の精神的緊張や過度の精神的刺激、情緒の抑鬱あるいは元来の肝気欝結の傾向のために気滞となる
 と、胞宮の気機も阻滞するためにおこる。
:鑑別点
 悪露が排出しない、あるいは少ない。
:随伴症状
 少腹部や胸脇部、乳房の脹満感や脹痛、イライラ感、精神抑欝感、易怒、ため息が多いなど。
:舌脈 舌質-紅、苔-白薄。脈-弦。
:弁証-気滞。 :治法-理気活血、調経。
:取穴例
 太衝(瀉法)、間使(瀉法)-疏肝解欝、理気散滞。気海(瀉法)-行気散滞。
 次リョウ(瀉法)-駆邪散滞。

3.寒凝胞宮による悪露滞留
:病因病機
 妊娠期や産後に風寒の邪を感受したり、冷たいものを多飲・多食する、雨に濡れるなどによって身体を冷
 やし、そのために寒邪が胞宮に侵入し、気機を阻滞させるためにおこる実寒証である。
:鑑別点
 悪露が排出しない、あるいは少ない。下腹部が冷えて痛み(絞痛などで拒按)、温めると症状は緩和する。
:随伴症状
 下腹部拒按、四肢や腰の冷え、寒がる、面色蒼白など。
:舌脈 舌質-淡暗、苔-白滑。脈-沈遅、沈緊など。
:弁証-寒凝胞宮。 :治法-温経散寒、調経。
:取穴例
 帰来(灸頭鍼(瀉法))、気海(灸頭鍼(瀉法))-温経散寒。次リョウ(瀉法)-駆邪散滞。

4.気血両虚による悪露滞留
:病因病機
 周産期に気虚になる、産後の消耗、分娩時間が長いため、産後の過労や、元来の虚弱体質などによって気
 虚となり、同時に出血過多、多産による精血の消耗などのために血虚となって気血両虚となると、気血が
 不足したために胞宮無力となるためにおこる。
:鑑別点
 悪露が排出しない、あるいは少ない。下腹部の下墜感をともなう。
:随伴症状
 めまい、面色淡白または萎黄、口唇や爪の色が淡白、不眠、心悸、精神疲労、倦怠感、無力感、息切れ、
 懶言、自汗など。
:舌脈 舌質-淡。脈-細弱など。
:弁証-気血両虚。 :治法-気血双補、調補衝任。
:取穴例
 脾兪(補法)、血海(補法)-健脾生血。気海(補法)-培補元気。子宮(補法)-調補衝任。