耳鳴り・難聴

投稿者: | 2017年10月24日

☆耳鳴り・難聴

このページは、鍼灸師、医師向けの鍼灸治療法を紹介するページです。
耳鳴りや難聴でお悩みの方は、はりきゅうマッサージ すこやかな森 で治療をお受けいただけます。

耳鳴りは、周囲の音とは無関係に耳の中で音を感じるものであり、難聴は聴力の低下した状態を指す。両
者は同時に出現することも多く、中医学的には同じ原因でおこるため、本項では同時に述べる。
なお、耳鳴りに似た症状で“頭鳴り”があるが、頭鳴りは頭の中で音が鳴る感覚を指し、耳鳴りは内耳や
外耳など、耳部で音を感じるものである。

1.風熱による耳鳴り・難聴
:病因病機
 風寒の邪気を感受してそれが化熱する、あるいは感受した風熱の邪気が、耳竅に侵襲して停滞するため
 に耳鳴り・難聴がおこる。
:鑑別点
 突然おこる耳鳴り・難聴。耳鳴りは、耳の中でヒューヒューと風が吹くような音を感じることが多い。
:随伴症状
 耳痛、耳閉感など、あるいは発熱、悪風、頭痛、無汗または少汗、軽度の口渇、黄色く粘稠な痰や鼻水、
 咽喉の発赤と疼痛などをともなう。
:舌脈 舌質-紅、舌苔-薄黄。脈-浮数。
:弁証-風熱症。 :治法-去風清熱。
:取穴例
 風池(瀉法)-去風。外関(瀉法)、大椎(瀉法)-清熱解表。耳門(瀉法)-去邪通竅。

2.肝火上炎による耳鳴り・難聴
:病因病機
 長い間ストレスや抑欝感を感じ続けたり、突然に強い精神的刺激を受けたり、陰血不足のために肝が滋
 養されないと肝気欝結となり、肝欝が長引くと化火して肝火上炎となる。その肝火が耳竅を塞ぐために
 耳鳴り・難聴がおこる。
:鑑別点
 突然おこる耳鳴り・難聴。耳鳴りは音が大きく強い。耳の脹痛をともない耳閉感が強い。
 ストレスや精神的緊張によって悪化する。
:随伴症状
 胸脇部の灼熱感、脹満感や脹痛、口苦、面紅目赤、口渇多飲(冷飲を好む)、イライラ感、易怒、めま
 い、不眠、便秘、小便黄赤など。
:舌脈 舌質-紅、苔-黄。脈-弦数。
:弁証-肝火上炎。 :治法-清泄肝火。
:取穴例
 行間(瀉法)-清泄肝火。陽陵泉(瀉法)-疏肝利胆。風池(瀉法)-熄風潜陽。
 聴会(瀉法)-清宣耳竅。

3.肝陽上亢による耳鳴り・難聴
:病因病機
 精血不足、陰津虚損、熱病による傷陰、久病、房事過多、五志過極、飲酒過度などにより陰液を損傷し
 て陰虚となり、その影響で肝陽が上亢するために耳鳴り・難聴がおきる。
:鑑別点
 次第に聴力が減退する。耳鳴りは日によって強さが変わる。耳や頭部の脹痛をともなう。
 ストレスや精神的緊張によって悪化する。
:随伴症状
 急躁、易怒、顔面紅潮、イライラ感、口苦、五心煩熱、不眠、多夢、腰膝酸軟、頭重足軽など。
:舌脈 舌質-紅、舌苔-少または無苔。脈-細数、弦細数。
:弁証-肝陽上亢。 :治法-平肝潜陽。
:取穴例
 太衝(瀉法)、陽陵泉(瀉法)-疏肝利胆。風池(瀉法)-熄風潜陽。照海(補法)-滋陰補腎。
 聴会(瀉法)-清宣耳竅。

4.痰火上擾による耳鳴り・難聴
:病因病機
 痰濁が長期にわたって停滞するために痰欝化火から化熱生風し、痰火が内風とともに上擾して耳竅を塞
 ぐために耳鳴り・難聴がおこる。
:鑑別点
 両耳の中でざわざわやがさがさなどの音のために音がはっきり聞こえない。耳閉感をともなう。
:随伴症状
 頭重感、頭のふらつき、面紅、口渇、胸悶、痰が多い、咳嗽、食欲不振、大小便がすっきりと出ないな
 ど。
:舌脈 舌質-紅、舌苔-黄膩。脈-滑数など。
:弁証-痰火上擾。 :治法-清化化痰、宣通耳竅。
:取穴例
 豊隆(瀉法)、内庭(瀉法)-清降痰熱。足三里(瀉法)、頭維(瀉法)-去痰降濁。
 耳門(瀉法)-去邪通竅。

5.気滞血オによる耳鳴り・難聴
:病因病機
 長期にわたるストレス、突然の精神的刺激などによって肝気欝結となり、気滞から血オ が生じたり、外
 傷や手術によって生じたオ血が耳竅を阻滞させるために耳鳴り・難聴がおこる。
:鑑別点
 突発的におこる耳鳴りや難聴。耳部の固定性の刺痛をともなうこともある。
:随伴症状
 耳閉感、頭のふらつき、頭痛、口唇が紫暗、口渇するが飲みたくない、肌膚甲錯など。
:舌脈 舌質-紫暗、オ斑、オ点など。脈-渋など。または舌脈正常。
:弁証-気滞血オ。 :治法-活血化オ、通竅。
:取穴例
 太衝(瀉法)、膈兪(瀉法)-理気活血。耳門(瀉法)、翳風(瀉法)-通竅聡耳。

6.腎陰虚による耳鳴り・難聴
:病因病機
 精血不足、津液虚損、熱病による傷陰、久病、房事過多、五志過極、飲酒過度などによって腎陰が虚し
 て内熱が生じて上炎し耳に停滞するために耳鳴り・難聴がおこる。
:鑑別点
 次第に聴力が減退する。蝉の鳴き声のような音の小さい耳鳴。
:随伴症状
 頬部紅潮、潮熱、盗汗、五心煩熱、口乾、頭のふらつき、消痩、耳鳴り、腰膝酸軟など。
:舌脈 舌質-紅、舌苔-少or無苔。脈-細数。
:弁証-腎陰虚。 :治法-補益腎陰。
:取穴例
 復溜(先瀉後補)-滋陰降火。太谿(補法)、照海(補法)-補益腎陰。
 耳門(先瀉後補)-開竅聡耳。

7.腎陽虚による耳鳴り・難聴
:病因病機
 高齢のための腎気の不足、久病による腎の損傷、先天不足、房事過多、外邪による陽気の損傷などによ
 って腎陽を損傷すると、精気を耳竅に送ることができなくなるために耳鳴り・難聴がおこる。
:鑑別点
 次第に聴力が減退する。蝉の鳴き声のような音の小さい耳鳴。
:随伴症状
 寒がる、四肢の冷え、未消化便を下痢する、五更泄瀉、小便清長、顔色が白い、倦怠感、懶言、精神不
 振、倦怠無力感、腰膝酸軟、遺精など。
:舌脈 舌質-淡、舌苔-白薄。脈-沈遅、細弱など。
:弁証-腎陽虚。 :治法-温補腎陽。
:取穴例
 関元(灸または灸頭鍼(補法))、腎兪(灸または灸頭鍼(補法))-温補腎陽。
 百会(補法)-昇陽益気。聴宮(補法)-調補耳竅。

8.脾気虚による耳鳴り・難聴
:病因病機
 飲食不節、思慮過度、疲労や過労などによって脾気虚となると、昇清作用が失調するために清陽が昇ら
 なくなり、その影響で耳竅が栄養されなくなるために耳鳴り・難聴がおこる。
:鑑別点
 耳鳴り・難聴が肉体疲労によって出現・悪化する。
:随伴症状
 疲労感、無力感、元気がない、懶言、食欲不振、腹部下墜感、食後腹脹、面色萎黄など。
:舌脈 舌質-淡、胖、歯痕、苔-白薄。脈-虚、弱など。
:弁証-脾気虚。 :治法-健脾益気。
:取穴例
 脾兪(補法)-健脾益気。足三里(補法)、中カン(補法)-補中益気。風池(補法)-昇陽益気。
 耳門(補法)-調補聡耳。