血便(大便下血)

投稿者: | 2017年10月19日

☆ 血便(大便下血)

このページは、鍼灸師、医師向けの鍼灸治療法を紹介するページです。
血便でお悩みの方は、はりきゅうマッサージ すこやかな森 で治療をお受けいただけます。

本症は、排便に血液が混じるものを指し、中医では大便下血という。大便下血には、出血だけのものと、
“先便後血”“先血後便”“便血雑下”があり、先便後血は先に排便があり排便の後半に出血するもの、
先血後便は最初に出血がありのちに排便となるもの、便血雑下は常に大便に血液が付着しているものを
指す。

1.大腸湿熱による血便
:病因病機
 脂濃いものや甘いもの、味の濃いものの過食やアルコールの常飲、外界の湿邪の侵襲などによって生じ
 た湿熱が大腸に下注して化熱し、血絡を傷灼したために下血がおこる。
:鑑別点
 便血雑下。暗黒色や、紫黒色で黒豆汁のような血便。肛門灼熱感をともない、肛門が硬く腫れて痛む。
:随伴症状
 裏急後重、悪臭の強い粘液便あるいは水様の下痢、小便短赤、口渇少飲または多飲(冷飲を好む)、身
 熱、腹部膨満感や腹痛など。
:舌脈 舌質-紅。舌苔-黄膩。脈-滑数など
:弁証-大腸湿熱。 :治法-清熱利湿。
:取穴例
 天枢(瀉法)、上巨虚(瀉法)-通腸導滞。中極(瀉法)、陰陵泉(瀉法)-清熱利湿。
 曲池(瀉法)-清熱通腑。

2.大腸風熱による血便
:病因病機
 風熱の邪気が陽明経脈に侵襲したため、あるいは湿熱が腸胃に鬱積したためなどにより、実熱が腸胃に
 停滞して脈絡を損傷するために下血がおこる。
:鑑別点
 先血後便で四方に飛び散るような鮮紅色の出血。肛門の灼熱感を伴うが痛みはないもの。
 急激におこり経過が短い。
:随伴症状
 発熱、口渇多飲(冷飲を好む)、便秘、歯齦の腫脹や出血、口苦、口臭など。
:舌脈 舌質-紅で乾燥。舌苔-黄。脈-数で有力。
:弁証-大腸風熱。 :治法-清熱涼血、熄風寧血。
:取穴例
 天枢(瀉法)、内庭(瀉法)、足三里(瀉法)-攻下泄熱。合谷(瀉法)、血海(瀉法)-清熱涼血

3.陰虚内熱による血便
:病因病機
 精血不足、津液虚損、熱病による傷陰、久病、房事過多、五志過極、飲酒過度などによって陰虚となっ
 て内熱が生じ、虚熱が大腸に停滞するためにおこる。
:鑑別点
 先便後血。鮮紅色や深紅色の血液が点滴するが出血量は多くない。
:随伴症状
 腹部鈍痛、目の乾き、頬部紅潮、盗汗、潮熱、五心煩熱、不眠、多夢、消痩、腰膝酸軟、便秘、尿が濃
 いなど。
:舌脈 舌質-紅、舌苔-少苔または剥苔。脈-細数など。
:弁証-滋陰清熱。 :治法-滋陰清熱。
:取穴例
 復溜(先瀉後補)-滋陰降火。太谿(補法)-補益腎陰。天枢(瀉法)、上巨虚-(瀉法)-通腸導滞。

4.脾腎陽虚による血便
:病因病機
 労倦内傷、久病虚損、久瀉久痢、房事過多などによって脾気と腎気がともに虚して腎陽が脾陽を温煦で
 きなくなるために、脾気が虚して統血ができず、腎気が虚して封臓できなくなるために下血がおこる。
:鑑別点
 先便後血。薄く暗淡あるいは黒色粘稠で出血量が多い。
:随伴症状
 寒がる、四肢や腰腹部の冷え、小便不利、下腹部冷痛、浮腫、腰膝酸軟、顔色が白い、倦怠無力感、食
 欲不振など。
:舌脈 舌質-淡、胖大、苔-白薄。脈-沈遅で無力など
:弁証-脾腎陽虚。 :治法-温補脾腎、益気摂血。
:取穴例
 関元(灸または灸頭鍼(補法))、腎兪(補法)、脾兪(補法)-温補脾腎。大腸兪(補法)-固渋腸道。