☆ 下痢（泄瀉）
このページは、鍼灸師、医師向けの鍼灸治療法を紹介するページです。
下痢や軟便、頻回な排便でお悩みの方は、はりきゅうマッサージ すこやかな森 で治療をお受けいただけます。
本症は、形のある大便ではなく、泥状、水様、未消化の大便を排便するとともに排便回数が増加するが、
排便時に裏急後重（テネスムス）をともなわないものを指す。中医では泄瀉という。
1.大腸湿熱による下痢
：病因病機
急迫な下痢。悪臭が強く黄色い粥状の便あるいは膿血便ですっきり排便できない。肛門の灼熱感を伴う。
：鑑別点
小便短赤、口渇少飲または多飲（冷飲を好む）、身熱、腹部膨満感や腹痛など、悪化すると裏急後重をと
もなう。
：随伴症状
舌質－紅。舌苔－黄膩。脈－滑数など
：舌脈 舌質－紅。舌苔－黄膩。脈－滑数など
：弁証－大腸湿熱。 ：治法－清熱利湿、止瀉。
：取穴例
天枢（瀉法）、上巨虚（瀉法）－通腸理気。陰陵泉（瀉法）－清熱利湿。曲池（瀉法）－清熱通腑。
2.寒湿阻滞による下痢
：病因病機
なま物や冷たい物の過食、雨に打たれて身体を冷やす、長期間の湿地での生活などによって寒湿の邪が中
焦に停滞して脾の運化作用が失調し、清濁の泌別作用が障害されるために下痢となる。
：鑑別点
激しく急迫で稀薄な水様便（悪臭はない）。腹部冷痛や絞痛で拒按、腸鳴を伴う。
腹部を温めると楽になり、冷やすとこれらの症状は悪化する。
：随伴症状
寒がる、小便不利、浮腫、食欲不振、腹脹or腹痛、胸や腹がつかえて脹る、咳喘、水様の痰など。
：舌脈 舌質－淡、舌苔－白膩。脈－濡、緩など。
：弁証－ ：治法－
：取穴例
神闕（棒灸）－温散寒邪。天枢（瀉法または灸or灸頭針（瀉法））－温通腸道。
上巨虚（瀉法）－通腸導滞。
3.胃カン食滞による下痢
：病因病機
暴飲暴食をする、不衛生なものを飲食する、あるいは冷たいものや生もの、甘いもの、味の濃いものや油も
のを摂りすぎたために食滞が生じ、清濁の泌別ができなくなるために下痢となる。
：鑑別点
腐酸臭がする水様の下痢または未消化便。胃カン痛（脹痛）を伴い、排便後は胃カン痛は軽減するがしばら
くしてぶり返すことが多い。
：随伴症状
吐くと胃カン痛は軽減する、アイ気や悪心嘔吐も腐酸臭がする、厭食、矢気など。
：舌脈 舌苔－厚膩。脈－滑、弦滑など
：弁証－胃カン食滞。 ：治法－消食導滞、止瀉。
：取穴例
下かん（瀉法）－消食導滞。天枢（瀉法）、上巨虚（瀉法）－通腸導滞。
4.肝脾不調による下痢
：病因病機
長期にわたってストレスを感じたり、精神的な抑欝を受けたり、突然強い精神的な 刺激を受けることによ
り、あるいは陰血不足の状態が長引くために肝気欝結となり、その影響で肝気が横逆して脾を犯し、脾の運
化作用を失調させたために下痢がおこる。
：鑑別点
精神的緊張やストレスによって腹痛や腸鳴を伴う下痢がおこる。便意急迫。
：随伴症状
胸肋部の脹満感あるいは脹痛、精神抑欝あるいは易怒、ため息が多い、食欲不振、疲労感、無力感、矢気、
腸鳴など。
：舌脈 舌質－淡紅、舌苔－白薄。脈－弦など。
：弁証－肝脾不調。 ：治法－疏肝健脾、止瀉。
：取穴例
太衝（瀉法）、外関（瀉法）－疏肝理気。脾兪（補法）、中カン（補法）－健脾益気。
5.脾気虚による下痢
：病因病機
飲食不節、思慮過度、疲労や過労などによって脾気虚となると運化作用が低下し、清濁の泌別ができなくな
るために下痢となる。
：鑑別点
大便溏薄または脾虚便であり反復して下痢を繰り返す。疲労時に下痢は悪化する。
：随伴症状
疲労感、無力感、元気がない、懶言、食欲不振、腹部下墜感、食後腹脹、面色萎黄など。
：舌脈 舌質－淡、胖、歯痕、苔－白薄。脈－虚、弱など。
：弁証－脾気虚。 ：治法－健脾益気、止瀉。
：取穴例
脾兪（補法）－健脾益気。足三里（補法）、中カン（補法）－補中益気。大腸兪（補法）－健固腸腑。
6.脾腎陽虚による下痢
：病因病機
労倦内傷、久病虚損、久瀉久痢、房事過多などによって脾気と腎気がともに虚して腎陽が脾陽を温煦できな
くなり、その影響で水穀の腐熟ができなくなるために下痢となる。
：鑑別点
未消化便を下痢する。五更泄瀉。身体を冷やしたり冷たものの飲食により下痢は悪化する。
：随伴症状
寒がる、小便不利、下腹部冷痛、浮腫、腰膝酸軟、顔色が白い、倦怠無力感、食欲不振など。
：舌脈 舌質－淡、胖大、苔－白薄。脈－沈遅で無力など。
：弁証－脾腎陽虚。 ：治法－温補脾腎、止瀉。
：取穴例
関元（灸または灸頭鍼（補法））、脾兪（補法）－温補脾腎。大腸兪（補法）、天枢（補法）－固渋腸道。